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さよなら、サイレント・ネイビー

BOOKS

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さよなら、サイレント・ネイビー—地下鉄に乗った同級生

著者: 伊東 乾

ISBN: 4087813681
出版: 集英社
定価: 1,680-円(税込)

途中のコンビニで買い求めたビニール傘と缶コーヒーを持った著者は東横線の中目黒駅から地下鉄日比谷線に乗り込んだ。1995年3月20日のオウム真理教による地下鉄サリン事件、その実行犯・豊田亨被告のその時の行動を再現すべく乗り込んだのだ

豊田亨は1968年生まれ、オウム真理教「科学技術省」次官、東大理学部物理学科卒、同大学院修士課程修了、専攻は素粒子論、同大学院博士課程進学直後に「出家」した。
現在、音楽家で東大助教授の著者・伊東乾は、その豊田亨と東大理学部物理学科で同級生だったのだ。

著者の同級生・豊田亨がなぜそのような事件を起こすことになったのか、二度とそのような事を引き起こすことのない為には何をなすべきか、著者の考察、検証は詳細を究める。オウムの教義、そしてその行動を分析し「局所最適、全体崩壊」の構造を明らかにしていく。
オウムの「出家」を「拉致」と位置づけ、そのマインドコントロールも最新の脳科学によって、そのメカニズムの解明へと歩を進めるのだ。


目次
出発を前に
第一部 出来事
    第一章 苦行 中目黒発・東武動物公園行
    第二章 筋書 アリジゴクの仕掛け
    第三章 創発 行為は気づきに先立つ
    第四章 欣求 官能と禁忌の二重拘束
    第五章 痕跡 局所最適、全体崩壊
第二部 証言
    通過列車を待ちながら…1999〜2004
    第六章 拉致 騙された罪の重さ
    第七章 調教 現象と詐術の接木
    第八章 麻酔 窒息するニューロンたち
第三部 伝言
    通過列車を待ちながら…2005
    第九章 手紙 さよなら、サイレント・ネイビー
    後継列車を待ちながら…2006年8月6日
    豊田自身による再発防止への呼びかけ
         松本智津夫の死刑確定を受けて……2005年9月16日


そのメカニズム解明から、オウムの薬物使用から、太平洋戦争時の軍部の薬物使用、そして特攻へと話が拡がる。
そして、同級生。豊田亨被告へ語りかける。
「豊さん。豊さんらしいやり方でいいと思う。イモを植えてほしい。彼らはそのイモに、新しい契約の水を掛けよう。」、本書の題名「さよなら、サイレント・ネイビー」は、黙って責任をとるのではなく、語って語って欲しい.......ということなのだが、「サイレント・ネイビー」という古くある言葉の印象と、本書の内容とは大いに異なるのではないかと考えるのは私だけではあるまい。

「誰かが黙って責任をとる」これをずっと繰り返しているから、1945年も1995年も、そしていまも、何一つ本当には裁かれないし、日本は何一つ変わらない。」とは腰巻きのキャッチコピーだが、ちょっと格好良すぎ......本書の言及する内容とはちょっと異なるという印象だ。

本書は第4回開高健ノンフィクション賞受賞作なのだ。

Posted by 秋山東一 @ December 4, 2006 09:57 PM
Comments

タウムさん、どうもです。
「4回開高健ノンフィクション賞受賞作」なのですが、ちょっと褒めすぎですね。なんとなく忘れられて消えていくような本.....その程度の本かなぁ、と今は思っています。
このSTOCKTAKINGのMTの仕掛けが壊れていて、こちらからトラックバックできませんがあしからず。

Posted by: 秋山東一 @ March 3, 2007 12:12 PM

TBさせていただきました。

知らない知識がいっぱい詰まっていて、いろいろ考えさせられました。

Posted by: タウム @ March 2, 2007 10:10 PM