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一 九 七 二

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一九七二「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」
文春文庫

著者: 坪内 祐三

ISBN: 4167679795
出版: 文藝春秋

定価: 710-円(税込)

その雑誌を手にしたことはないが、この大部な評論は雑誌「諸君!」に2000年2月号から2002年12月号まで連載されたものだそうだ。

著者は第一回「なぜ、この年なのか」から始める。
「............つまり、高度成長期の大きな文化変動は1964年に始まり、1968年をピークに、1972年に完了すると。さらに言えば、1972年こそは、ひとつの時代の「はじまりのおわり」であり、「おわりのはじまり」でもあるのだと。」
著者・坪内祐三は1958年生まれ、この一つの時代、それを少年の目で見てきた世代だ。

著者より16年も年上の私にとって、22才から30才の時代、20代の時代の全て、建築を学ぶ学生から設計事務所での実務、そして、やみくもに独立して自分の事務所を構えるという時代であった。

1964年10月10日の東京オリンピック、その時、芸大建築科の3年生だった私と大行とは上野からバスに乗って開会式の行われている外苑の競技場をかすめるように新宿にでかけた。1968年には二年ほど余計にいた芸大建築科を卒業し東孝光氏の事務所に入った。2年後の大阪万博を前にして忙しい時代であった。
そして、1972年、東事務所を退所、なんのあてもないまま、独立して自分の事務所を構えようとしていた。それに結婚までしようとしていたのだ。

私にとっても1972年は、まさしく、「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」であったのだ。


目次
  第一回 なぜ、この年なのか
  第二回 ポルノ解禁前夜
  第三回 日活ロマンポルノ摘発される
  第四回 ストリップショーと「四畳半襖の下張」
  第五回 連合赤軍事件と性意識
  第六回 赤軍派と革命左派の女性観の違い
  第七回 それは「水筒問題」からはじまった
  第八回 永田洋子の期待と失望
  第九回 遠山美枝子のしていた指輪
  第十回 榛名ベースでの新党結成と意識の落差
 第十一回 南沙織が紅白に初出場した夜に
 第十二回 二人の「兵士」の二十数年ぶりの「帰還」
 第十三回 十四歳の少年が大盛堂書店の地下で目にしたもの
 第十四回 奥崎謙三の『ヤマザキ、天皇を撃て!』
 第十五回 札幌オリンピックとニクソンの中国訪問
 第十六回 テレビの画面が映す出していったもの
 第十七回 坂口弘が「あさま山荘」のテレビで目にしたショッキングな光景
 第十八回 「あさま山荘」の制圧とCCRの来日コンサート
 第十九回 箱根アフロディーテとフジ・ロック・フェスの間に
 第二十回 雷雨の後楽園球場でのグランド・ファンク・レイルロード
第二十一回 「はっぴいえんど」の松本隆青年のイラ立ち
第二十二回 頭脳警察の「うた「を必要とした若者たち
第二十三回 キャロルとロキシー・ミュージックが交差した瞬間
第二十四回 若者音楽がビッグビジネスとなって行く
第二十五回 ローリング・ストーンズの「幻の初来日」
第二十六回 TVメディアが作る新たなアイドルの登場
第二十七回 「危険な十四歳」と「子供を殺す母親」たち
第二十八回 金曜日夜八時の「日本プロレス」中継終了と『太陽にほえろ!』の放映の開始
第二十九回 『ぴあ』の創刊と情報誌的世界の登場
 第三十回 『ぴあ』の「帝国主義的」拡大路線への転換と混乱
第三十一回 「大相撲ダイジェスト」と山陽新幹線
第三十二回 田中角栄が「今太閤」として支持されていた頃
  最終回 二〇〇二年十月に読む『世界』一九七二年十二月号
      あとがき
      解説 時代格闘家・坪内祐三  泉 麻人

本書の全てにわたって重低音のように「連合赤軍事件」がある。その当事者達が私より数年若い世代であることを思い出した。
72年2月28日昼、「あさま山荘」での警官隊との攻防のテレビ中継を市ヶ谷界隈の蕎麦屋のテレビで見ていた。午前中、建物の引き渡しか何かで現場にでかけていたのだった。

Posted by 秋山東一 @ November 13, 2006 09:07 AM
Comments

iGa さん、どうもです。
1972年に本書の著者・坪内祐三14才が、最大の関心をもつのは「十四歳の少年が大盛堂書店の地下で目にしたもの」ポルノでありました。
彼が「なぜ、この年なのか」という問題を提議し、それを証明するという本ではありませんでした。その時代の事象、世相を週刊誌的に掘り起こし、読者の想像力を喚起させる.......てな感じなのかな。
しかし、その時代、ロックもピアも......私にはあまり関係のないものでありました。

Posted by: 秋山東一 @ November 14, 2006 12:22 PM

考えてみると僕が14歳のときも「おわりのはじまり」でしたね。
ていうか、社会に関心を持ちはじめる年頃なのかな。
朝目覚めると、母が「大変な事になった。」と騒いでいた。
何かと思ったらJ.F.K.の暗殺が初のTV衛星中継で配信されている最中だった。
母は暗殺が切っ掛けでマジで第三次世界大戦になるかと思ったみたい。
Wikipediaで1963年を検索すると、この年も変革の時代だった。

平穏な年を探すほうが難しいでしょうが、1972年が興味深いのはこの年に筒井康隆が『家族八景』、『馬の首風雲録』、『にぎやかな未来』、『48億の妄想』、『俗物図鑑』、等の代表作を発表していたこと。まったく、今の世の中、筒井康隆が1970年代に書いたSFドタバタ小説そのもの。そういえば「アフリカの爆弾」もこの年でした。

Posted by: iGa @ November 14, 2006 10:08 AM

kassue さん、どうもです。
命令放送、核武装、美しい日本、と怪しげな世界が浮かび上がってきたような気がします。将来の「今」から見た、あの時、その時がエポックメーキングなものとして語られることになるでありましょう。
ブログ、面白くいたしましょう。まずは。

Posted by: 秋山東一 @ November 13, 2006 08:55 PM

かなり刺激的な見出しが並んでますね。
74年生まれの私にも気になるキーワードだらけです。
今30代の私にとって、90年代・00年代が、30年後にここまで暑苦しい記憶となるんでしょうかねぇ?

話し変わって、ブログを始めました。リンクさせていただきましたので報告いたします。
http://blog.livedoor.jp/kass_0/

Posted by: kassue @ November 13, 2006 06:56 PM