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ヒト 家をつくるサル

Architecture , BOOKS

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ヒト 家をつくるサル
学術選書 011
著者: 榎本 知郎


ISBN: 4876988110
出版: 京都大学学術出版会
定価: 1,575-円(税込)

ヒトは「家」を作り、そこに住む。それは人間だけではない、鳥は樹上に巣をかけるし、ウサギやモグラの地面に穴を掘る。
しかし、種として人間に近いサルたちは「家」を作ることはない。なぜ、人間だけが「家」を作るのか、その問題を、霊長類学・人類学の研究者である筆者が、最新の知見に基づいて語ったのが本書なのである。それも、一つの謎解きを読むように面白く語られるのである。

二本足で歩くサルを人類という。約600万年前に人類は誕生した。いくつかの種に分かれながら、我々、ヒト(ホモ・サピエンス)は20万年前にアフリカで誕生し、5,6万年前にアフリカを出て、世界の隅々へと散らばっていった。それぞれの地域でそれぞれの文化を築き、そして、それぞれの「家」を建てたのである。


目次

第1章 「巣」とは何か?
 休憩所としての「巣」
 巣づくりをする動物たち
 巣づくりの進化
第2章 子育てと巣
 早成性と晩成性
 サルのライフ・スタイル
 ヒトのライフ・スタイル
第3章 トイレ
 寄生体と病気
 トイレ
 哺乳類の糞の使い方
 トイレをもつ動物たち
第4章 巣と寄生虫
 害虫と伝染病
 巣に潜む外部寄生虫
 シラミと人類進化
第5章 家の誕生
 ベッドをつくる大型類人猿
 祖先の人類の寝床
 家族で岩陰に寝たネアンデルタール人
 ホモ・サピエンスの登場
 情報の飛躍とホモ・サピエンス
第6章 ヒト=家をつくるサル
 「家づくり行動」の遺伝子
 「ねぐら」としての家はいらない
 家づくりは面倒だ
 早熟の人類
 脳と人類進化
 フローレス原人
 晩成性のホモ・サピエンス
 家づくりの条件
 巣づくりをするサルの誕生

さらに学びたい人のためにー文献案内
索引


各章の最後に脚注のように独立したコラムが11項ある。本文に触れられている事項を補填するような役割をしている。それも最新の知見をそこで詳説するような形が役立つ。コラム08「言語の遺伝子」が面白かった。

いわゆる、チョムスキーやピンカーの「言語生得説」について、最近2001年、その言語の遺伝子 FOXP2 が発見されたんだそうだ。
米国の、家系の約半数の人たちに重大な言語障害が現れるKE家族と呼ばれる家族についての研究によって、重大な言語障害のもとになっていると思われる遺伝子が発見され、それがFOXP2遺伝子なんだそうだ。  

著者は「家をつくるサル」という存在である人類に、言語の遺伝子と同じように「家づくり行動」遺伝子群が存在し、それが特定されるであろうことを語っている。
ちょっと幼稚な表紙イラストで損しているが、「家をつくるサル」という題以上に、現在の人類学の先端というべき知見が面白いのだ。

Posted by 秋山東一 @ July 26, 2006 05:47 AM
Comments

Aki先生、いつもためになる情報ありがとうございます。
おもしろそうなので早速注文してしまいました。
なぜか、峰君を思い出してしまいました。
よろしくお伝えください。

Posted by: おそのえ @ July 26, 2006 10:02 AM

おはようございます。
先生のブログには勉強させていただくことが
たくさんあります。
夏休みに読んでみようと思います。

Posted by: たかさん @ July 26, 2006 09:03 AM