LAST CITADEL | [ BOOKS , TANK ] |
本書の著者、デイヴィッド・L. ロビンズ David L. Robbins は、ジュード・ロウ主演の映画「スターリングラード」の原作本といわれている「鼠たちの戦争」の著者である。戦記物というよりも戦記に題材を借りた戦争小説というべきものである。
本書の舞台は第二次世界大戦中の1943年夏、中央ロシアの平原のクルスクで繰り広げられた独ソ両軍の死闘である。題名のCITADEL、ツィタデルは「城砦」のこと、ドイツ軍の作戦名だ。クルスクを中心に大きく突出したソ連軍の前線をその根本部分で挟撃すべく、南北からドイツ軍がクルスクに向けて侵攻するという作戦だ。
その戦闘地区は広大で、南は東京都、埼玉県、神奈川県、北は栃木県から群馬県に掛けた一帯、東は群馬県、新潟県、長野県の東半分、山梨県までが含まれるんだそうだ。そこで激突した独ソ両軍、兵員415万人、戦車1万3000両だそうだ。ちょいと想像もできないなぁ。そこで史上最大の戦車戦、本書の「クルクス大戦車戦」が行われたのだ。
本書に登場する人物もいかにも戦争小説として多彩にして面白い。
ソ連軍の T34 戦車の乗員のコサックの親子、旧式の複葉の爆撃機で夜間地上攻撃をするその娘、戦線の後方で活躍するパルチザンの活躍を絡めて進行する。ドイツ軍側には、ナチスドイツの内部に仕掛けられたルーシーのスパイ網の一員の高級将校、ティーガー戦車隊を率いるスペイン義勇軍の親衛隊将校等々なのだ。
双方がその運命の戦場プロホフカの大草原で出会う。 T34とティーガーとが出会うのだ。
昔、大藪晴彦の小説で、筋立てよりも登場する銃器の解説に頁をさいていたものだが、本書もそれほどではないが、兵器の解説に頁をさいている。とにかく、本書によって、あの戦車 T34、ティーガーの鉄の箱の中で、その狭い視界での戦いをリアルに感じるのは間違いない。
David L. Robbins: The Official Web Site
Posted by 秋山東一 @ March 15, 2006 06:40 AM