脱出記 | [ BOOKS ] |
脱出記ーシベリアからインドまで歩いた男たち
スラヴォミール・ラウイッツ Slavomir Rawicz/著 海津 正彦/訳
ISBN: 4789726304
出版社:ソニー・マガジンズ
価格: 2,310-円(税込)
「事実は小説より奇なり」なんて陳腐な言葉じゃ語れない、空前絶後、驚天動地の冒険譚なのだ。
第二次世界大戦勃発、ポーランドは西からナチスドイツ、東からスターリンのソ連の侵略を受け分断される。25才のポーランド陸軍騎兵隊中尉だった著者はソ連当局にスパイ容疑で逮捕され、非人間的な尋問、拷問によって強制労働25年の判決を受け、第二次世界大戦さなかの1941年暮れ、シベリアの強制労働収容所に移送される。
その何千人もの囚人の、4,800kmに及ぶシベリアへの移送自体、おどろおどろしい世界だ。
極寒の地シベリアでの収容所生活、外部の情報から途絶した世界は耐え難いものだった。彼はそこからの脱出を決意する。
春めいてきた四月、6人の仲間と自由を求めて脱走を図った。
それは収容所からの脱走というわけではない、シベリアからの脱出、ソ連からの脱出、シベリア、モンゴル、ゴビ砂漠、チベット、ヒマラヤ……、その前途には想像を絶する試練が待ちうけていたたのだ。
飢餓、極寒・炎暑を乗り越え、7人はただただ歩き続けた自由をめざして歩き続けたのだ。インドに向かって、それは、1942年春までの一年間、6,500kmを歩き続けるのだ。
いやぁ、本書は1956年刊行とのこと、半世紀も経っての邦訳だ。
当初、本書は「虚構」というような話もあったそうだが、25ヶ国に翻訳されているそうだ。本書の各所のディテールのリアリティは実際に経験した者でければ、到底記述できないようものに満ち満ちているのだ。
全てに過酷な行程だが、モンゴル、チベット人の遊牧民との交流が本書の大いなる人間的な部分だ。
Posted by 秋山東一 @ December 7, 2005 10:11 AM