杉本博司展をまだ見ていないけど | [ BOOKS ] |
杉本博司展をまだ見ていないけど、「苔のむすまで time exposed」を読んだ。
苔のむすまで time exposed
著者: 杉本博司
ISBN: 4104781010
出版: 新潮社
定価: 2,730-円(税別)
彼の展覧会「杉本博司: 時間の終わり」を見ていないけど、その作品群、理解できるような気がする。なぜなら、彼はそれを作りだした、すくなくとも本書にその論理立てと手法をはっきりと記述し、その通りの作品を作っているのだ。
きっと、杉本の写真って、「一瞬」を切り取る、カルチエ・ブレッソンの決定的瞬間に代表されるような近代写真を否定し、写真と時間との関係を再構築したんではなかろうか。
この初評論集もまさしく「時間」の問題だ。書名に time exposed とあるのだ。
この16章の一つ一つは、彼の写真の一枚と、その写真の Q&A から始まる。彼自身は自問自答といっているが、それら全てが「時間」を問題にしているように思える。
一章「人にはどれだけの土地がいるか」は、the series of Architecture のワールド・トレード・センターの写真、本書の表紙の写真だ。
9.11 の自身の体験から、鴨長明の方丈記の記述、そして方丈庵の跡、ワールド・トレード・センターの跡地たるマンハッタン島の歴史、資本論、都市、そして、彼の作品、the series of Architecture の「無限の倍の焦点」による現代建築の写真の理由、そこから、主題の「人にはどれだけの土地がいるか」、その寓意から、現代の極度に肥大した資本制への批判へともってくるのだ。
愛の起源......不埒王の生涯.....大ガラスが与えられたとせよ.....風前の灯.....苔のむすまで等々、各々、皆、明晰な文章にして、軽妙なといいたくなるほどこなれているのだ。面白いのだ。
展覧会「杉本博司: 時間の終わり」が楽しみになってきた。