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椅子づくり百年物語

BOOKS

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椅子づくり百年物語   床屋の椅子からデザイナーズチェアーまで

著者: 宮本茂紀

ISBN: 4540040782
出版: OM出版/農文協

定価: 2,800-円(税込)

komachi memo2 の真鍋さんの新しい本だ。「百の知恵双書」の10冊目の本なのだ。

これはすごい本だ。宮本茂紀という徒弟から椅子づくりに携わり、今、量産家具から椅子の試作開発までやられる、デザイナーでなく椅子作りの職人が椅子について書いた本なのだ。

そこでは、この100年間の椅子が語られる。それも表面の話ではない、その中味、構造、材料、技術が詳細な図解とともに語られる。床屋の椅子から、マッカーサーの執務椅子、マリオ・ベリーニから堀口捨己、写真館の椅子から車の座席まで語られるのだ。

乗り物の椅子、シートの話はとても面白かった。

新幹線が営業を開始した年、1964年、あの頃の新幹線の普通車の座席はとても酷い物であったのを思い出した。三人掛けと二人掛けで、座の部分は固定され背の部分が進行方向によって反転させるという仕掛けの奇妙な物であった。科学朝日の記事だと思うが、人間工学の専門家による評価で「作業用」という評価であった。大阪まで3時間以上、作業用と称される座席に座らされているのは拷問そのものであった。

本書の著者は平成7(1995)年、山形新幹線「つばさ」のシートの座り心地の悪さを指摘したことから、JRの秋田新幹線、夜行寝台列車の内装家具の開発と連なっていく。そんな乗り物の内装開発は、自動車のシートの開発にも手を広げ、あの「エリーカ」の開発にも携わられるのである。

古典的な椅子から、最新の工業製品としての椅子まで、本書の著者・宮本茂紀の椅子の世界は広く、深いのである。

Posted by 秋山東一 @ November 6, 2005 12:03 AM
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