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空へ

BOOKS

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空へ ―エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか
文春文庫


著者: ジョン・クラカワー  Jon Krakauer
訳者: 海津 正彦
ISBN: 978-4167651015
出版社: 文藝春秋
価格: .....-円(税込)

ずいぶんと昔……2005年に本書を紹介しようとしていたのに、書きかけのままであったのだ。ふと、本棚の隅を見たら文庫判の本書があった……という訳でエントリーすることにする。

しかし、amazon を覘いてみたら、絶版……、こんな面白い本が絶版とは驚いた。中古品の価格も軒並み1,500-円以上とは驚きだ。単行本であれば400-円台から……、まぁ、図書館を探すのが得策か。

・・・・・

原題は INTO THIN AIR だ。vanish (disappear) into thin air なるフレイズで「雲散霧消する;雲散する」なる意味があるようだから、8,848mという高所での実際の Thin Air の二つの意味を持たせているのであろう。邦題は「空(から)へ」というようなものかしら……。

8,848mの世界最高峰エヴェレスト(最近はチョモランマ……なのかな)、1996年5月、その登頂を果たしたした登山隊の遭難事故、12人の死者(最近の Wiki では8人とあるが……)を出す遭難事故のドキュメンタリーなのだ。

エヴェレストは、1953年5月29日英国遠征隊のヒラリーとテンジンによって初登頂された。その知らせは三日後のエリザベス女王戴冠式の前日にロンドンにもたらされ、英国人の意識を大いに高揚させることになったのだ。

そして、現代……1990年代半ばには公募隊による登山が主流となる。アマチュア登山家であっても必要なコストを負担すればエベレスト登山に参加できるようになったのだ。

そんなエヴェレスト登山の有様をレポートすべく、著者・ジョン・クラカワーもクライアントとして登山隊に加わることとなる。そして大遭難は起こったのだ。


目次
  はじめに
  登場人物

  第1章 エヴェレスト山頂 1996年5月10日 8,848メートル
  第2章 インド、デーラ・ダン 1852年 681メートル
  第3章 北インド上空 1996年3月29日 9,000メートル
  第4章 パクデイン 1996年3月31日 2,800メートル
  第5章 ロブジェ 1996年4月8日 4,930メートル
  第6章 エヴェレスト・ベースキャンプ 1996年4月12日 5,360メートル
  第7章 第一キャンプ 1996年4月13日 5,650メートル
  第8章 第一キャンプ 1996年4月16日 5,950メートル
  第9章 第二キャンプ 1996年4月28日 6,500メートル
 第10章 ローツェ・フェース 1996年4月29日 7,100メートル
 第11章 ベースキャンプ 1996年5月6日 5,360メートル
 第12章 第三キャンプ 1996年5月9日 7,300メートル
 第13章 南東稜 1996年5月10日 8,400メートル
 第14章 頂上 1996年5月10日、午後1時12分 8,848メートル
 第15章 頂上 1996年5月10日、午後1時25分 8,848メートル
 第16章 〈サウス・コル〉 1996年5月11日、午前6時 7,980メートル
 第17章 頂上 1996年5月10日、午後3時40分 8,848メートル
 第18章 エヴェレスト北東稜 1996年5月10日 8,700メートル
 第19章 〈サウス・コル〉 1996年5月11日、午前7時30分 7,980メートル
 第20章 〈ジェネヴァ・スパー〉 1996年5月12日、午前9時45分 7,900メートル
 第21章 エヴェレスト・ベースキャンプ 1996年5月13日 5,360メートル
エピローグ シアトル 1996年11月29日 82メートル

  著者覚え書き
  訳者あとがき
  「文庫版」追記
  写真増補版につけた後記


遭難に遭われて亡くなった方多数……、その事実を記述したものを読んで面白いといってはいけないかも知れないが、実に面白い読書だった。

極限状況の中で生身の人間はどう行動し生きていったのか、あるいは死していったのか……。


追記 120828

本書はクライアントで、Little Ackford の住人、故三橋靖彦氏に教えていただいたものであった。

大泉に建てた別荘のクライアントであったが、仕事がらみの話以外に、よく飲みながら雑談をかわしたものだったが、そんな中で、面白かった本として話してくださった。氏がお読みになったのは原書、出版されて程なくであったものをお読みになったものであった。

すっかり忘れていたのだが、2000年に文庫本になったものを書店で見つけたものであった。


Posted by 秋山東一 @ August 28, 2012 12:02 AM
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