030714

フォルクスA, 平面プランの考え方

OM/VOLKS HAUS

フォルクスA, 平面プランの考え方 フォルクスA紙上設計塾 Vol.2
共有 /1998年10月号
OMソーラー協会 発行
(9801016)


フォルクスA、平面プランの考え方
フォルクスA紙上設計塾 Vol.2

先月号のっけから MAC no Uchi の話しに終始してしまいました。面食らった方もおられたかもしれません。CADの話しをしながら MAC no Uchi の話しのほうが理解しやすかったかも知れません。この連載で「CADの勧め」というような回で、改めてお話したいと考えています。 MAC no Uchi はフォルクスハウスの設計の道具あるいはジグというようなものです。従ってその使い方を間違えばうまくいきません。今回は、まず設計の常識というべきことを考えてみましょう。
実際的に現実の平面からフォルクスハウスの設計を考えてみます。
これは現実の計画です。ある工務店の設計施工のフォルクスハウスの計画です。
これを反面教師(ごくごくありがちな平面ですが)としてフォルクスハウスの計画を考えてみましょう。
予条件は夫婦と子供1人(来年小学校入学の男の子)の3人家族、将来ご両親と同居の可能性ありとのこと。フォルクスハウスで明るい広々としたOMソーラーの住まいを望んでおられます。
敷地の条件は厳しく、風致地区で敷地境界から1M500離れなければなりません。又、道路から2M幅の敷地延長という土地です。

Plan1.GIF.gif

このプランは610下屋なしのフォルクスハウスです。
でも、なんだかハウスメーカーの家にみえないこともない。まず気になる事をランダムに取り上げてみましょう。

1)玄関
小住宅の玄関の位置をどこにもっていくのかいろいろ考えはあると思います。
この敷地の場合、長い敷地延長の先からまだ細い路地で、建物の奥までというのは問題だと思います。全体の平面にかかわっている問題です。
全体の計画のなかで最後に玄関の位置が決まっているように思えます。
2)厨房、勝手口
これも全体の計画の中で位置を決めねばなりません。外部、敷地の外に遠い勝手口、厨房が問題な気がします。これだけ独立して考えるわけにはいきませんが。
3)便所
最大の欠点は外に面していないことです。全体の事情を優先させたマンション等では外に面していない水廻り便所をよく見かけますが、戸建ての住宅では極力さけるべきです。他の予条件や、その意図がないかぎり外部に面し外の光、風が通るべきです。
4)水廻り
この計画では2階に水廻りです。1階にご両親と同居の場合の和室が用意されているのであれば浴室洗面所の水廻りは、やっぱり1階にあるべきであると思います。2階に浴室を設ける場合にはコストとその位置に注意をはらわねばなりません。この場合の玄関上の浴室はさけねばなりません。配管やその他、苦労の種です。1階2階設備がらみの部分は重ねるのが原則です。
5)吹き抜け
2M4Mの吹き抜けがこの平面で、何か意味のあるものなのかどうか疑問です。吹き抜けは「天井の高い1階」ではありません。1階と2階をつなぐ空間です。その意味を十分に考えなければなりません。ただただ天井の高い部屋が必要とは思えません。
全体にいえることは平面が部屋の集まりとしかとらえられていないことです。
まず部屋を作って廊下、階段でつなげることしか考えられていません。それはフォルクスハウスでは否定される方法です。在来工法の間仕切りが構造体になるという既成概念を否定し、構造と部屋という概念は別物としてとらえねばなりません。又、部屋と部屋、フォルクスハウスの Mac no Uchi でいえばユニットとユニットが重なり合い、その境界があいまいなのも気になります。
今までの設計ではその境界領域の部分を工夫するのが「設計」であるようにとらえられていますが、少なくともフォルクスハウスの設計では間違いです。今までの上手といわれる「作品」はそんな部分のかたまりなのです。
そんなものはフォルクスハウスでは必要ありません。

下は私のスケッチです。例と同じ610ですが、まったく別物に見えると思います。さきほどプランの欠点として取り上げた部分は全てなおしてあります。

Plan2.GIF.gif

一番大きな考え方の違いは最初の捉え方にあります。それは大きなワンルーム、人連なりの大きな空間があることを前提としてユニットを配置していくという Mac no Uchi の考え方でできているからです。
ハウスメーカーのテレビコマーシャルで「この家の動線がこんがらかっているのに建ててから気がついたんです」とかいって「・・・設計力」なんていうのがありますがナンセンスです。あんなこといっているから部屋がただただ廊下にぶらさがった家ばかりなのです。大きなお屋敷というような計画で使われるべき方法です。小住宅の設計では「動線」なぞということを大きくとらえる必要はありません。
小住宅、フォルクスハウスではまず大きな空間を作り必要な機能をはたす単位( Mac no Uchi ではユニット)を配置するのが平面の作り方です。

秋山東一
「月刊」共有 Vol.14 10月号 所収

Posted by 秋山東一 @ July 14, 2003 02:00 AM
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