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フォルクスAの設計とMAC no Uchi

OM/VOLKS HAUS

フォルクスAの設計とMAC no Uchi フォルクスA紙上設計塾 Vol.1
共有 /1998年9月号
OMソーラー協会 発行
(980910)


フォルクスハウスAの設計とMAC no Uchi
フォルクスA紙上設計塾 Vol.1

「フォルクスハウスの設計は難しい。」とか「うちは設計力がないから」なんて話をよく聞きます。ほんとうにそうなのでしょうか。

本当は「フォルクスハウスの設計は易しい。」「フォルクスハウスの設計ってこうだったのか、これならうちでもできる。」というものなのです。

フォルクスハウスの設計と在来木造の設計の違いというより、いわゆる「設計」に対する誤解がフォルクスハウスの設計を難しくしているのではないかと考えられます。

住宅の設計が上手とかいわれる、とにかく考えすぎ、難しいディテールをこれ見よがしに表現するものではありません。奇態なデザインや、クリカラモンモンみたいなものを設計とはいいません。フォルクスハウスの設計が難しいという話は、そんなデザインがやりにくいと、言っているように思われます。

フォルクスハウスの設計は容易なのです。全てに無限大の選択肢が用意されていたとしたら、それは誰にとっても容易ならざるものでありましょう。フォルクスハウスは限界をもったシステムです。そして全てに適当な限界を与えてあります。あるいはその設計の 80% がもうできている、といっていいのです。いつもいつも、がんばって芸術作品を作るのではありません。それは多大なエネルギーを必要とします。それはごく一部の住宅の世界です。フォルクスハウスは基本的な定番となる良質なOMの小住宅を作る仕掛けなのです。

●「MAC no Uchi」という考え方

フォルクスハウスが初めて世の中にでた5年前、最初はプレカットの新種の在来工法という扱いでした。ベースと下屋の組み合わせ、全体の寸法と限られた開口部しかありませんでした。まだ、設計手法の確立というには不十分でした。今、 MAC no Uchi という考え方ではっきりしてきました。そしてパッケイジという仕掛けにまで進歩してきのです。

MAC no Uchi は物のことではありません。考え方の話です。ベースと下屋の組み合わせというフォルクスハウスの考え方をもう少し進めて、住宅の内部にまで踏み込んで設計手法をはっきりさせたものです。

小さな部品、パーツ、その組み合わせによる単位、ユニット、それをおなじみのベース 808 608 に配置して平面を構成する、というのがその骨子です。

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住宅の内部に必ず必要な部分、通常、部屋という形であるものをユニット、単位ということですが、そのユニットに分解しました。階段、玄関、水廻り、厨房のように住宅に必要な部分です。そして、そのユニットにどんなバリエーションがあるのか考えました。例えば、階段は4種類が想定されています。単純なまっすぐな直階段を I 階段、上がりの最初に直角に曲がった L 階段、いってこいの U 階段、もうちょっと余裕の J 階段というわけです。この4種類の階段で十分であると思いませんか。そして、その寸法を決めます。メーターグリッドのフォルクスハウスでは余裕をもってその大きさを決めることができますし、階高が最初から決定されているのですから完全に決定することができます。

よりよい設計のためには経験をつみながら一つ一つの部分を改良していかねばなりません。あいまいな全体の部分として考えていては、改良も、その検証もできません。一つ一つの単位ユニットに分割されていることによって、それを進化させ、全体をよりよいものにすることが可能です。それは合理的です。

ユニットはS、W、E、T、Kの5っのユニット、階段、浴室を含む水廻り、独立したトイレ洗面所、玄関そして厨房です。あと2階のバルコンのB、下屋もGというユニットと考えたほうがよさそうです。

選択されたベース内部に各ユニットを配置していく、それが平面を作ります。そして、その方法で作られたプランが「パッケィジプラン」となるのです。

現在、全てのユニットについての図面化の計画が進行中です。それはは今までの専門家むけの施工用の図面とは違ったものになるはずです。日曜大工店の店頭で市販されている図面のように、誰でも製作可能な「型紙キット」のような形になるはずです。そして、必要ならば材料の供給、2種類の試作された階段のようにキットとしての供給、また、それに必要な特別な部品パーツの開発となる予定です。

●セルフヘルプ

「フォルクスハウスって、今はやりの情報開示、ディスクロージャなんですね。」と言った建築家がいました。「木造打ち放し」というコピーに代表されるその構法、その仕上げだけでなく、そのものを作りだした設計自体も情報開示しなくてはなりません。いままでの、あいまいもことした設計方法では、何をどう作るのかを説明することもできません。同じルールの設計方法が必要なのです。住まい手にとって全てを理解し自身で決定しうる仕掛けでなければなりません。専門家も素人も同じルールの上で家をつくれる方法が「Mac no Uchi」なのです。

セルフヘルプ、自助といいます。住まい手が理解し自分で決定しうることが、設計方法を変えることの最大の目的です。

これから、何回かにわたって、共有の誌面でフォルクスハウスの設計とは何か、その実際にわたって書いてみようと考えています。「全ての技術は記述しうる、記述されたものは理解しうる」というのが私の主旨なのです。

秋山東一
共有 vol.13 所収

Posted by 秋山東一 @ July 14, 2003 01:00 AM
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