希望格差社会 | [ BOOKS ] |
希望格差社会「負け組」の絶望感が日本を引き裂く
著者: 山田昌弘
ISBN: 4480863605
出版: 筑摩書房
定価: 1,900-円(+税)
20世紀初頭風の絵、田園風景の中のサーカスというよりも遊園地、ジェットコースターのように四輪車がスロープをを滑り降り、グルッと逆さまに中空に放り出されて、再びグルッと着地するという装置の絵だ。
そんな不安定な恐怖というべき世界が、穏やかな田園風景の中にある。
本書の著者は、これからの社会をそのようなものとして見せてくれるのだろうか。
著者は「パラサイトシングル」という言葉を発明した学芸大学教授、広範な統計資料を駆使し、緻密に分析手法を駆使し、現代社会を「希望格差社会」と位置づけていく。
1990年代以降、日本社会のニューエコノミーへの移行に伴い急激に社会が不安定化している。著者は、その大きな要因は二点、リスク化と二極化にあるとする。前者は、終身雇用や年功序列制の崩壊とそれに起因するサラリーマンー専業主婦型家族制度の崩壊、後者は少数の正社員と圧倒的多数のフリーターという形で進行中である。リスク化と二極化の結果として不安定な社会、それが「希望格差社会」と名付けられる。
職業の不安定化、家族の不安定化、教育の不安定化、そして「希望の喪失」とゆるぎなく畳み込む。著者が、その証左としてあげる統計資料は「クラジミア感染率」にまでおよぶ。
終章「9 いま何ができるのか、すべきなのか」は23頁、全体246頁のほんの一部、社会改革の必要性、個人的対処の限界、公共的取り組みの再建となる。しかし、公共的取り組みの具体例は「マッサージ業界......」と、その内容はお寒いかぎりだ。そして、「......深刻度を増すに違いない。」という結論だ。
「それで、どうする」の「どうする」がない。この言葉「希望格差社会」だけの為に本書が書かれたような気がする。
毎日毎日のニュースは、そう名付けられた社会の有様を示しているようで、なんともである。
コメント、トラックバックいただきありがとうございました。
洗練されたブログ 楽しみにしています。
これから次々と紹介してくださる玩具とても楽しみです。
上記の書物、「警鐘」という意味で意義深いです。この本の著者はきっとタイトルおよびテーマの重みに耐えられなかったのでしょうね。
おっしゃるとおり、書物の場合は、「それでどうした...」がすごく大切のように思えます。
それではまた訪問させていただきます。
Posted by: eirakusan @ February 17, 2005 08:38 PMeirakusan さん、はじめまして。
コメント、そしてブックマーク、ありがとうございます。まだまだ、お話ししたい玩具がたくさんあります。楽しみにしていてください。
いやな本の話し、お読みいただき恐縮です。日々、この本の通りの世界になりつつあるのではないかと心配していますが、誰もが希望を持ちうる世界を希求しています。
勝手ながら、aki's stocktakingを小生のBLOGでブックマークさせていただいております。
特に車のおもちゃが大好きです。子供の頃押入れいっぱいにブリキのおもちゃをためこんでいたのですが、引越しのたびに捨ててしまい、思い出すごとに「惜別」の思いがこみあげてきます。イセッタのみごとなモデルが一番印象に残っています。(今はミニチュアカーで我慢しているしだいです)
そんな気持ちを和らげてくれるサイトでもあります。
今回の本、内容はまだ確かめてませんが、実にぶきみです。しかし、格差社会への動きの背景では、何が勝つことで何が負けることなのかが分からなくなるような動きも進行しているように思えます。
希望を失う前に、自分を変えられるかどうか挑戦してみないと先へ進めないような毎日です。誰もが希望を失う崖っぷちに立たされているような気がします。しかし次の面白さは、そういったところから生まれてくるのだと言い聞かせたいです。
これからもこのサイトを楽しみにしています。
Posted by: eirakusan @ February 17, 2005 02:55 PM