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セルフビルド そして MECCANO

OM/VOLKS HAUS



この論考「セルフビルド そして MECCANO」は住宅建築 1998年1月所収のものです。



セルフビルド そして MECCANO


フォルクスハウスは木質軸組パネル工法のプレファブシステムとしてOMソーラー協会の会員工務店のためにクローズされたシステムとして1994年に開発された。現在、システムは若干の変更はあったものの開発当初の仕様のまま供給されている。

構造システムは集成材の柱梁による軸組工法、構造用合板を両面にはった気密断熱性能の優れたパネルによって壁を構成する。グリッドをメーターモジュールとし、最大スパンを4mとする。2400mm、2600mm の2種類の階高、5寸、10寸の2種類の屋根をもつ。又、開口部はカナダ製の木製復層ガラス入建具として限定された種類、寸法も決定されている。フォルクスハウスと名付けられOMソーラー協会の敷地内に建設されたのが1994年9月であった。又、その普及と並行して木造合理化システム認定も取得された。フォルクスハウスの各部材を生産する2工場、及び流通させる機構も整備されている。

OM会員工務店300社の内200社が参加し、この3年あまりで1000棟のフォルクスハウスが全国中に建設された。工場でつくられた部材、部品を現場で組み立てる家、工業化された木の家、気密断熱性能の高い躯体にOMソーラーを備えた家はフォルクスハウス「木造打ち放しの家」と名付けられ、一つの家の作り方、一つの住まい方として定着しつつあるように思える。

●精神としてのセルフビルド

「家って買うものじゃないでしょ。作るものでしょ。」
「初めから、住宅の性能に投資するOMソーラーの家を考えていました。フォルクスハウスにしたのはコンセプトや構造が明快で、設計から施工まで心配がいらない点が魅力だったからです。・・・・・」
これらはフォルクスハウスを自分の家として選んだ人の言葉である。

自分の家を建てたい人にとって現在可能な住宅を建築する方法は大工さん、工務店に依頼するのか、あるいは建築家に依頼するのか、はたまた住宅展示場でハウスメーカーを選択するのか、そんな選択肢しかない。どの家を建てる方法、どの選択肢も、いわゆるクライアント、施主にとってはまったく同じ欠陥をもっていると考えている。
住まい手にとってどれかの家の建て方を選択したとたん、彼らがどんなに自分の家の様々な要因について決定したくとも、その建て方の専門家にまかせねばならない。決して彼らが家を作るという行為の真ん中に座ることはない。彼らがどんな要望をもっていたとしても、それは専門家に処理される事項にすぎない。彼らが唯一決定したことは家の建て方を決定したにすぎない。

設計、施工そのどの局面をとっても専門家の仕事を完全に住まい手に明らかにされることはない。それは大部分、専門家たちの都合に左右される。専門家達、建築家あるいは設計者、工務店、大工、いわゆる職人達、いわゆる業者達にまかされることになる。住まい手が参加させられるのは極論でいえばタイルの色だけではないかといえるぐらいである。そして完成した時には、住まい手は完全な受け身の消費者になってしまっている。それでは、新しい家での新しい住まい方、自分の家のメンテナンスもおろそかになるのは目に見えている。そんな事態にならない幸福な住まい手と専門家の組み合わせはごく希なことであろう。

結局、その欠陥は家の作り方に内在していると考えられる。どんなに良心的な専門家にとっても作り方、その決定のプロセスを住まい手に説明、あるいは理解させることはできない。その家の作り方自体、その限界を住まい手自身が理解し住まい手自身が責任をもって決定しうるシステムだけが、それを満足しうると考えられる。

フォルクスハウスは誰にとっても明解な住宅である。住まい手にとっても作る人にとっても。どうやって作るのか、どうできるのか、誰にとっても明快にそのものが提示されている。むき出しの集成材の梁、構造用合板の壁、むき出しの金物は誰の目にも明らかである。又、その可能性の限界も明らかである。フォルクスハウスは完全なオープンな構法ではないし、その部材、部品の設計によってその限界は事前に決定されている。4m は最大のスパンであり部材はそれ以上の長さのものは用意されていない。又、開口部のある外壁も決して4m まるまる開口にならないよう開口部の建具の寸法によって決定づけられている。単純明快な構法、全ての構造部材や継ぎ手を露出させ明確に表現されていること、そして適切な限界を構成しているシステムがフォルクスハウスなのである。

住まい手を中心に据えた家を作るシステム、それがフォルクスハウスであり、住まい手自身が、自分自身で決定しうるセルフビルドの家なのである。

セルフビルドといって、いわゆる日曜大工のように直接自分自身で家を作る、それを言っているのではない。今、我々の生きる近代という世界に、住宅であってもそれは適切な建築手法とはいえない。その仕組みを理解し作ってもらったり、作ってあげる仕組みをフォルクスハウスがもたねばならない。住まい手と作り手(設計者も工務店も)が共通の認識、理解の上に家を作ることが出来る。それを「精神としてのセルフビルド」と言いたいと考える。

フォルクスハウスの「木造打ち放し」というコピーは真壁工法として集成材の柱を表しパネルの構造用合板をむき出しにした表現からきている。そのパネル表面には釘、骨組みの継ぎ手には金物もまた隠されてはいない。全ての仕上げ、ディテールにもその駆体同様に明快なデザインが必要である。そのとき求められるのが「単純」さ、そして「 直截」さである。

なにも仕上げに従来の住宅と同じような気取った技巧、芸はいらない。あくまでに誰にでもわかるディテールでなくてはならない。各要素、各部分を組立るのに必要な金物、木ネジ、それらを隠したりすることはない。フォルクスハウスはそれらが物の表面を飾るのを許容する。それを隠すための専門家達、設計者、大工職の技能、芸当をフォルクスハウスは必要としない。

●家を作るメカノ

「セルフビルドの家」フォルクスハウスは専門家の技量を必要とせず、誰でも組立可能な部品要素が必要であると考えている。木ネジ、金物によって組立られる階段、手摺、家具造作を整備すべきと考えている。それにはもうすでに良き手本があることに気づいた。「メカノ」という金属製の組立玩具である
メカノというのは MECCANO という金属製の組立キットのことである。我国ではあまり馴染みない玩具であるが、欧米ではレゴとおなじくらい有名な伝統的な玩具である。今世紀はじめ英国人のホーンビィ氏によって開発され、組立玩具といえば MECCANO が代名詞となるくらいのものである。金属製の各種の板材、棒材、役物、車輪、ギヤ等々で構成され小さなネジ、ナットで組み立てる。クレーンや車等々、メカニックな機構を実際に動かすことのできる玩具を組み立てることができる。基本的には各種の長さの等間隔に穴の開いた板材だが、それらで構成された構造物を活かす多くの機能部品要素がメカノにはある。

Meccano.gif

フォルクスハウスは基本的な躯体を構成する要素部品こそそろっているが、まだまだ家を成り立たせる機能部品要素は貧弱である。それはいまだに現場仕事の要素を多くもち、住まいとしての水準を不安定なものとしている。もっと美しく単純で機能的な部品要素を充実整備させることが必要である。それは現場での作業を効率化し設計自体をも変えていくと考えている。

フォルクスハウスは住宅を組み立てるメカノでありたいと考えている。前述したように、これから整備されるたくさんのフォルクスハウスの部品要素はそのメカノのようにフォルクスハウスを構成するようになる。

1997年OMソーラー協会の設計によって808パッケージプランが発表された。階段、手摺、厨房カウンター、洗面台、下駄箱等の造作部分も部品化しより合理化、プレファブ化させようという試みである。現在、パッケージプランをより発展させ、フォルクスハウスをメカノに向かって進化させようと考えている。たくさんの規格化された部品要素はその多様性を損なうことなく、より合理的にフォルクスハウスを構成しうるものになると考えている。

フォルクスハウスが住まい手を中心にすえた「セルフビルド」の家、「メカノ」みたいな家の作り方が用意できた時、フォルクスハウスは住まい手の意識を変えると同時に作り手の意識をも変革すると考えている。



秋山東一
住宅建築 1998年1月号所収

Posted by @ August 26, 2003 01:14 PM
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