030724

14. ホールアースカタログが・・・

TAU·SHOKEN·KENCHI , THINK

LANDship/1997
ST.GIF

秋山東一のストックテーキング [14] The last..

「ホールアースカタログがあった」

「建築知識」1986年8月号所収


● Once upon a time……、昔“ホールアースカタログ”の真っ黒くて、大きくて、分厚い型録だ。ホールアースはWhole Earthで、全地球カタログなんてものなんだ。このカタログに、僕はひどく影響をうけたものだ。

● ラストホールアースカタログの真っ黒な表紙の真ん中には、三日月みたいな地球の写真。夕方なんだ。副題には「access to tools」。「道具への近道」とでもいうのであろうか。とにかく、これはカタログなんだ。そこには450頁にわたって大量の「道具」……色々な道具、本、情報が集められている。全体のシステム、土地利用、シェルター、工業、クラフト、コミュニティ、放浪、コミュニケーション、学習、なんて具合にジャンル分けがされていてその各々に大量の情報が詰まっている。そして、ひとつひとつのアイテムにはスタッフの詳細なコメントとイラストがついている。とにかく、その膨大な情報量とアイテムの面白さに見飽きることがない。

W.GIF

● 僕が初めて見たのは、これがラストという“ラストホールアースカタログ”で、1970年のことだったが、74年には“ホールアースエピローグ”、81年に“ネクストホールアースカタログ”と、ホールアースカタログは未だ持続されている。“ネクスト”には政治、ビジネスという新しいジャンルが加わり、コンピュータなんてジャンルも始まっている。結構、変化はしているのだ。(追記111010 僕が初めて見たのは……は間違っていました。Spring 1970 の定期刊行物だったものを、大阪の設計集団にあったものだ、)

● どんなに分厚く、どんなに大きくてもカタログはカタログなんだ。ひどく実際的、プラクティカルな目的機能をもっているんだ。ホールアースカタログは、全ての膨大な情報を個人のもとに取り戻すことを目的としている。そのアイテムは有用で、高品質で、安価で、目的的でそして郵便で簡単に手に入るという、実に実際的な機能をもっているものなんだ。


● ホールアースカタログは「全地球」という概念をひとつのカタログという形体に括ってしまったといえる。全地球という概念、これはひとつの時代精神だ。バクミンスター・フラーの「宇宙船地球号操縦マニュアル」の「地球号」のことだ。僕等個人は1人1人宇宙船地球号の乗組員なんだ。そんな意識、そんな時代精神がホールアースカタログを作り出したのだ。

● 僕等は今、大気圏外からの地球の光景を想像することができる。虚空に浮かぶひとつの球体、青く美しい星だ。「地球」は僕等の宇宙船なんだ---僕、君、僕の猫、緑、自然、環境、建築、都市、エネルギー、政治……東京、ニューヨーク、ソウル……の地球。そう、チェルノブイリの地球…………

「建築知識」1986年8月号所収

1970 年、WHOLE EARTH CATALOG を嶋田洋書に取り寄せを依頼した。今みたいにインターネットで、といかないから大変、その時、手に入れたのが LAST WHOLE EARTH CATALOG であった。なんだ、もう終わってしまったのかと思った。お値段は7000円(たったの $5 なんですが)もしたのを覚えている。
それ以来、ずっと WHOLE EARTH CATALOG がね、ね、と言い続けているような気がする。
あの頃は、聞いた事もあるかもしれないが、スチュアート・ブランドがやったんだなんて聞いても分からなかったと思う、そうだったのか、と分かって、より理解できるようになったのは、HOW BUILDING LEARN を手に入れてからだ。
今、HOW BUILDING LEARN に学んだ考え方で、Be-h@us の設計手法、バラック・メソド「バラックに作る」を実践に向けて用意するつもりだ。
-----------aki/030728

re.GIFback.GIF

Posted by @ July 24, 2003 09:00 AM | TrackBack (0)
Comments

江坂さん、こんにちは。
Hotwired の特集、早速読んでみます。
--
ホールアース・カタログに一番影響された建築ジャーナリズムは、この blog で、私が昔の記述「機械解読」を載せていただいた TAU であったと思います。
結局、4号で潰れてしまいましたが、あの頃は、皆、元気がありました。
「雑誌がつまらない」なんて誰も云わなかったな。面白くて、面白くて、でした。

Posted by: 秋山東一 @ July 28, 2003 12:12 PM

五十嵐さんも変なもの持っていますね。
-------
そうだ、「メディア・ラボ」がありましたよね。持っているけど読んでいなかったなー。
そういえば MIT の Media Lab. のビデオを ASCII からもらってたな。どこかにあるはず、あったらお見せします。

Posted by: 秋山東一 @ July 28, 2003 12:02 PM

秋山さん、こんにちは。
以前、ホールアース・カタログにまつわる特集をやったことがあります。
影響を受けた方、多いんですね。
http://www.hotwired.co.jp/matrix/9802/
読みにくいデザインになっているので、テキスト・オンリーはこちらをどうぞ↓
http://www.hotwired.co.jp/matrix/9802/textonly/index.html

アメリカのホットワイアードは、ホールアースカタログと人脈的に直系に当たるのですが、そのあたりが、こちらの図でわかります。
http://www.hotwired.co.jp/matrix/9802/chart.html

Posted by: esaka @ July 28, 2003 11:59 AM

1989年にリリースされたThe Electronic Whole Earth CatalogのHyperCard版CD-ROMがあったことを思い出し、試しにMacOSXで起動してみたら、何の問題もなく作動した。MacPlusでもブラウズ可能なスクリーンサイズが今では微笑ましい。まだ、QuickTimeもないころだから動画もなく、画面も白黒二値でサンダースキャンで取込んだようなイメージがあるだけである。

http://landship.sub.jp/stocktaking/archives/000144.html

インターネットそのものがWhole Earth Catalog化している現在ではこのようなCD-ROMの存在価値は既に失われているだろうが、HyperCardで逸早くWhole Earth Catalogを作ったスチュアート・ブランドのフットワークにこそ意義があると思う。

僕がスチュアート・ブランドに出会ったのは彼の著作「メディア・ラボ」(1987年刊)の翻訳版(1988年・福武書店)を読んでからのこと、それで彼がWhole Earth Catalogの編者であることを知った。

Posted by: 五十嵐進 @ July 28, 2003 11:26 AM