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 7. 時計って・・・

TAU·SHOKEN·KENCHI , TOOLS

LANDship/1997
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秋山東一のストックテーキング [7]

「時計って不思議なものなんだ」

「建築知識」1986年1月号所収


●「時計」ってものは、僕等にとって一番親しい機械と言えるだろう。誰だって1個や2個は持ってるし、ごく当たり前に最初から腕にくっついていると言う感じで“機械式なんだ”なんて意識さえあんまりない。

●クオーツ、そしてデジタルと、いつの間にか月差何秒以内なんてものになって、1日に何分か狂うのは当たり前、毎日ゼンマイを巻かなくてはならないなんて時代は、もうひと昔前のこと、という雰囲気になってしまった。それに、どんどん安くて良い物が出てきて、正確=高価という相関関係も成り立たなくなってきた。僕が初めて腕時計を買ってもらった頃のことを考えてみると、その辺りの大きな違いには驚かされてしまう。とは言っても、今腕につけている時計も外観だけは昔と似たようなものだ。子供の時、算数の時間に習った時計の読み方そのままだ。短い時計、長い分針そして秒針と、3本の針を読む。そしてその習慣からか、デジタルの数字での表示には妙に落着かなさを感じる。

●誰でも一度は、動かなくなった「目覚まし時計」を分解したことがあるだろう。たくさんの歯車の組み合わせ、真鍮色の歯車は、いかにも「機械」というものだった。今では、そんな時計は珍しいものになってしまった。蓋を開けても分解の可能性は少ない。プラスチックに埋もれた小さな電池と小さな回路と部品が少々---。分解できたところで、面白いものではなさそうだ。いつの間にか時計は、ブラックボックスになってしまったようだ。全ての技術はデジタルの方向に向いている、というわけだ。印刷技術で作られた電気回路によって、歯車でやっていたことは全て可能になってしまった。

●「時計」がそんな変化を遂げ、妙に正確に、安価になったからと言って、別に僕等が特に便利になったり新しいことができるようになったわけではない。僕に取っての時計は、約束の時間を決めた時や、原稿の締切の時間のためにちょっと必要なだけの物だ。けれども、それでいて腕にくっついていないと妙に落着かなかったりして---。

●「時計」というのは不思議な機械だ。人間の作り出してきた機械と言われるものは全て、人間の肉体的能力の拡張という意味あいをもっているのに、「時計」だけはちょっと違っている。例えば、飛行機、自動車、印刷機やワープロにしても、僕等の貧弱な肉体の能力を補い拡張しているのに、「時計」は一つの観念的、概念的な機械としか言いようがない。

●“時間”という一つの約束事と僕等の関係の中でしか、「時計」は機能しないものなのだ。

「建築知識」1986年1月号所収

----------- aki/030724

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Posted by @ July 24, 2003 10:30 AM
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