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 3. ワープロって・・・

TAU·SHOKEN·KENCHI , TOOLS

LANDship/1997
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秋山東一のストックテーキング [3]

「ワープロって字体なんだ」

「建築知識」1985年9月号所収


●この原稿はワープロで書いていない。手で書いている。原稿用紙の上にHBの9㎜のシャープペンで書いているのだ。決してワープロが嫌いな訳ではない。すごく好きでちゃんと持っているし、原稿以外のことになら使っているのだ。

●ワープロってのはいつのまにか、ごく当たり前のものになってしまった。ほんの2年前、30万円を切ったと大騒ぎしたのに、今ではその時と変わらない性能にして10万円以下で買えるようになってしまった。プロ用の、あるいはビジネス用といわれるような高価で高性能なワープロの世界から、パーソナルなワープロ、ちょっとした日本語インテリジェントタイプライター、それを皆が使うというような時代が来たみたいだ。

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●昔、僕は平仮名タイプライターを使っていた。梅棹忠夫の「知的生産の技術」の影響だ。それはとにかくタイプライターなのだ。その出来上がったものは日本語には違いないのだが、日常的な漢字仮名まじり分とは異なったローマ字に近いような、そう、異形化されたものなのだ。僕はいつも、活字になった世界ではその内容はともかく、絵面、字面が気になってしまうのだ。ワープロを使い始めてから、妙にそんなところが気になりだしたのだ。ワープロによって、字体が微妙に違う。同じ24ドットでも色々な字面があるのだ。そう、ワープロってのはパーソナルな印刷機なんだ。だから字体も大いに気になるものなのだ。

●高価で高性能なワープロならともかく、僕等の手に入るワープロでは、まだずいぶんその機械に慣れさせられてしまう。僕等の使い方に機械の方が近づいてくれればいいのだが—。例えば職業がら「こうじ」を工事と変換したいのだが、僕のワープロでは「麹」がまず出てくるのだ。僕は農学者ではないから麹菌を論じることは一生ないであろう。しかも、残念ながら学習機能がないから、「工事」の前にはいつも「麹」がでてしまうのだ。どうも、まだ清書機械という感じが強いのだ。

●やはり“書く”ということは“考える”ということと切り離すことはできない。書きながら考え、考えながら書くのだ。それは、アイデアプロセッサー、「思考処理法」というようなことになるだろう。つまり、人間の考え方を学習する事ができ、国語能力を十分に持っている機械ということなのだ。

●とにかく、もうちょっと賢いワープロが欲しくなった。もちろん、字のきれいなやつ。そしたら、もう少し手間がかかってもワープロで原稿を書くことにしよう。

「建築知識」1985年9月号所収

この原稿の頃、まだ手で書いていたんだ、とびっくりした。 MacPaint で絵は描けても、MacWrite で日本語は書けなかった。そんなわけで、コンピュータは Machintosh で、日本語の文章用に「日本語ワープロ専用機」を使っていたのだ。でも、それって清書用というものでしかなかったのだ。 「工事」と出て欲しいのに「麹」と出てしまう事の原因は、住所が出るかどうかを優先したからだそうだ。そうなんだ「麹町3丁目・・・」と出てこないと困るからなのだ。とにかく、その頃、発展途上の事象についての記述は、そんなに長続きしないのだ、ということが分かる。 ----------- aki/030721

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Posted by @ July 24, 2003 11:20 AM
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