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 2. 幻燈機って・・・

TAU·SHOKEN·KENCHI , TOOLS

LANDship/1997
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秋山東一のストックテーキング [2]

「幻燈機ってファイルなんだ」

「建築知識」1985年8月号所収

♦「幻燈機」なんて名称は、もう死語に近いのではなかろうか。「幻燈しよう」なんていったってもう知らない。「スライドを見る」というのならば通じるようなのだ。ちょいと最近幻燈してみる集まりがあったのだが、スライドを写して皆んなで見るというのはなかなか楽しいものなのだ。スクリーンに写した大きく鮮明な映像は、テレビに慣れ過ぎた僕等にはとても魅力的だ。

♦ スライドプロジェクターという機械にもいろんな種類があるが、ともかく基本的には「幻燈機」なのだから、それ程大きな差があるわけではない。従って、“スライドをいかにスクリーンに写すのか”ということより“スライドをどう処理するか”ということが問題になってくるのだ。それは、スライドを収める入れ物の形体・形式がどうなっているのかということになるだろう。現在一般的なのは、DINと呼ばれているドイツ規格の棒形のマガジンと、コダック社のカルーセルというトレイ型マガジンの2種類だ。棒形のマガジンは前後に動いて横からスライドを引きずり出す方式だし、カルーセルはその名の通りトレイが回転木馬のようにグルグル廻って下にスライドを落っことすという機構で、そのシステムに根本的な違いがある。

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♦ 結局のところ、なんといったってカルーセルのほうがいいのだ。とにかく始末がよい。トレイにスライドを収めておけば、いつでも自由に写せるし持ち運ぶことができる。それにマガジンを逆さにしようがスライドは落っこちたりしない。スライドとマガジンは一体になっていると考えたっていい。その点DINのマガジンは、その機構上逆さにすればスライドは落っこちてしまうのだ。これは、スライドとその入れ物との関係としてはとても困ったことだ。

♦ スライドって、基本的に一つのファイリングシステムなんだ。本棚から本を取り出すように一つのトレイを取り出して、スライドプロジェクターにかける。これはとても簡単だ。コダックのスライドプロジェクターは、たくさんのトレイをもっている時とても有効な道具たりえるのだ。トレイが一つしかなくて、その度にスライドをトレイに入れ替えていたら、この秀れたシステムの半分も使っていないことになるだろう。そう、スライドプロジェクターは単に幻燈する道具というより、一つのファイリングシステムなのだ。

♦ 先日、こわれてしまった僕のコダックを分解した。1/4インチのナット回しが必要で大変だったのだけれど、その中味の複雑怪奇なことには驚いてしまった。アイデアの簡明さに比べてあまりに複雑すぎるのだ。

♦ とにかく、僕のコダックの「幻燈機」は復旧の見通しがたっていない。

「建築知識」1985年8月号所収

 壊れてしまったコダック・カルーセルは、その頃の日本の総代理店・長瀬商会だったかな・・に行って、部品を買ってきて直した。それは今でもある・・というのは凄いでしょ。 こののコダック・カルーセルは1970年の大阪万博の政府館の展示に使われていたという由緒あるものなのだ。その後、放出品として市中に出たものとか、友人の建築家・小林恒氏にいただいたものなのだ。

 現在は新型のコダック・カルーセルを2台所有しているが、もう、プレゼンテーションはスライドプロジェクターの時代ではなくなってしまった。
ラップトップと液晶プロジェクターの時代である。パワーポイント、キイノートというアプリケーションの商品名は、「パワーポイントする」というように、もうすでにプレゼンテーション自体を表している時代だ。

スライドプロジェクターからファイリングシステムを考察するという、この話はとても気にいっている。
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aki/030721

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Posted by @ July 24, 2003 11:30 AM
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