030712

3. Schnorchel シュノーケル

TAU·SHOKEN·KENCHI , TOOLS

機械解読3 LANDship/1997
「TAU」1973年4号所収


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今回、ここで論じるのは、潜水艦はなぜ浮き沈みするかという問題ではない。

[シュノーケル]というメカニズムについてなのだ。

第2次大戦末期のドイツのUボート、そして戦後の通常潜水艦はすべてこのメカニズムがついている。それは原子力潜水艦によって根本的に変わるまで現代の潜水艦についてまわったのだ。
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潜水艦は、動力源を2種類もっている。 ディーゼルエンジンと電気モーターの2つである。
シュノーケル以前の潜水艦は、水上での航行はディーゼル、水中での航行は蓄電池の電力でというわけである。水上でのディーゼル航行中に発電機により充電しておいて、水中ではその充電された電力で走るというわけだ。その動力のシステムには根本的に無理があった。非力な蓄電池での潜行は短時間であり、水中での速力にも限界があった。
その問題の解決のためにシュノーケル装置がオランダで発明されたというわけだ。

シュノーケルは、潜水艦上部の突出した吸排気パイプである。潜水艦は海面下に潜水し、そのパイプから吸気と排気しながら、ディーゼルエンジンで水中航行できるようになった。それはまったく単純で、幼稚なメカニズムなのだ。大戦末期のドイツUボートは、それを装着していた。

シュノーケルと同様のメカニズムを、われわれは身近に使用している。それはバランスドフリューのガス湯沸器やガス風呂釜、である。
両者はまったく同じ目的をもち、同じようなメカニズムをもっている。両者とも燃機関としての致命的な問題である。 空気の必要を機械的に解決したに過ぎない。少なくともバランス釜は、室内の空気を使わずに燃機関であるボイラーを、室内で燃焼させることに成功した。同様に、潜水艦のシュノーケルも、外気(海上)に突出した吸排気孔によってディーゼルエンジンを動かすことに成功したわけだ。

その機械的幼稚さは、原子力潜水艦“ノーチラス”が成功するまで未解決であった。
それは水面下に沈んだバランス釜を空気を必要としない一躍完全な潜水艦にしてしまった。
ジュール・ヴェルヌのあの有名なSF<海底2万哩>の潜水艦の元祖であるノーチラス号は、すべて電気を動力としている。
あれだけの性能を発揮するにはまったく現在とは次元の異なる蓄電池を必要とする。それが原子炉というわけだ。

決して、バランス釜が原子炉に変わることを望んでいるわけではない。
あれはあれで完全なもののような気がする。それにジュール・ヴェルヌも完全なバランス釜についてSFには書いていないし発明家的センスに満ち満ちたバランス釜、バランスドフリュード潜水艦はおもしろいのだ。
機械解読学上、原子力潜水艦にはシュノーケルのようなすぐれものは何もないのだ。

「TAU」1973年4号掲載


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Posted by @ July 12, 2003 09:00 AM
Comments

30年前の私の記述です。この aki's STOCKTAKING のアーカイブの底にあるべきものなのです。
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あの頃、風呂のお釜といえばバランス釜、湯沸器といえばバランス式と、バランス某が最新鋭のガス給湯設備だったのです。私は妙にそれが好きでありました。というところでシュノーケルとの類似性を書くことになったのでありました。
しかし、もうバランス式某をみかけなくなりました。ガス設備は外に置くのが常識になりましたし、設備の小型化はずいぶんと設備の設計自体をラクチンにしたのではないかと思います。それと同時に設備自身のブラックボックス化も進んで、もう何か理解しようとか、好きになるとかいう設備自体も失われてしまったような気がします。
住宅のエネルギー源が太陽電池、燃料電池になったり、エネルギー機器が進歩してもブラックボックス化させない、それはデザインできるのではないか、と考えています。

Posted by: 秋山東一 @ July 14, 2003 05:33 PM