2. スティーム トラクション エンジン | [ TAU·SHOKEN·KENCHI , TOYS ] |
機械解読2 LANDship/1997
「TAU」1973年3号所収
18世紀、ワットの発明した蒸気原動機の主要な点は、ピストンの直線運動を回転運動にかえることであった。そのために、蒸気を供給し、排出するメカニズムが必要となったわけである。そのメカニズムがない蒸気機関はありえない。MAMOD スティームトランクションエンジンは、もっとも簡単な、吸排気機構をもっている。それは<首振りエンジン>と昔からいわれる、簡単、単純な機構である。これは1785年、ワットの共同者であったムルドックの着想した機構である。
クランク軸と直線上に並ぶシリンダー自体の振れによって給排気を行う。そのシリンダーの振れを<首振り>とよんでいるわけだ。現実には、ムルドックの弁機構は、他の方式、D型滑り弁方式にとってかわられ、現代の蒸気機関にはまったく使われていない。
シリンダーとピストンの直線運動を回転運動に変えるという、簡単な機構に、複雑な弁機構を付加したわけだ。
現実には、効率とかいろいろと現実問題があるわけだが、シリンダーとピストンだけの全体機構の運動の内部に給排気機構を含んでいる首振りエンジンのほうがメカニズムセンスとしてすぐれている。
機械解読学においては、機構の複雑さを解明することではない、その巧妙さを単純な機構の中に発見することを目的とし、その推理の対象たりうる機械に価値をおく。
その意味で首振りエンジンの機構はひじょうに高度である。それは、技術家的発想というよりは、発明家的発想といえるであろう。複雑な機構を複雑に作りだすことは容易であっても、複雑な機構を単純に作りだすことはむずかしい。
使用方法
1. ボイラーにお湯(水からでは時間がかる)を満たす。
2. アルコールランプを炉室に入れ、沸騰させる。
3. ボイラー内に蒸気が満ちて、吸気パイプより吹き出したなら、ハズミ車を手でまわす。
4. 動き出す。前後進レバーによって、調速、前後進の選択がなしうる。機械全体が高温となるため、注意を要する。
1気筒であるため、自力で動き出すことはできない。前進力を与えて少し助けてやらねばならない。
「TAU」1973年3号掲載
ご存知であれば、教えてほしいのですが、
日本に、トラクションエンジン(ミニチュア1インチー3インチ)をともに楽しむ同好会などりますか?
大塚(ドイツ)
Posted by: Junji Otsuka @ September 22, 2004 08:46 PM30年前の私の記述です。この aki's STOCKTAKING のアーカイブの底にあるべきものなのです。
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このスティームトラクションエンジンは、ヨーロッパで一般的に使われていたものです。
道路工事用のロードローラーだったり、貨車を牽引してトレーラーのように使われたりと多用途な使われ方をしていました。面白いのは移動の道具としての使い方以外に、移動式の動力源として使われていたことです。
蒸気機関としてその動力は、ベルトで他の道具を駆動することができ、ダイナモを回転させ発電もできました。どれだけそんな使われかたをしたか分かりませんがスティームトラクションエンジンのモデルの定番はサーカスのトラクションエンジンです。巡業の為、たくさんの貨車を牽引して移動して、巡業地では動力源、電力供給源となる。その上、温水まで供給できる。まさしくコジェネというべき仕掛けなのです。
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これって、これからの燃料電池で走る自動車が、別荘に向かい到着したらその別荘に電気を供給し、電灯をテレビを、そしてシャワーまでまかなう、そんな世界を先取りしていると思うのです。
そう思うと、このスティームトラクションエンジンが、実に現代的な仕掛けに感じられます。
Posted by: 秋山東一 @ July 13, 2003 06:45 PM