030602

タンク

TANK

LANDship/STOCKTAKING/010731

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まぁ、いろんな興味とか趣味ってのがあるんだけれど、僕は建築以外の「機械の設計」ってのがすっごく好きなのだ。メカニズム・マニアとも云われているが、昔、建築雑誌(TAU という前衛的な建築雑誌、4号で廃刊)に「機械解読」という題で、いろんなメカニズムの理屈を連載していたことがあるのだ。
ミリタリストと誤解されてはのは困るのだが、特にタンクについての興味は並大抵なもんじゃないんだ。
僕のタンク好きって結構年期が入っていて半端なもんじゃない、2才の頃(1944年)、ニュース映画を見ていてそこに登場した戦車を見て「タンク!」と叫んだそうだ。父から「おまえは赤ん坊の頃からタンクが好きなんだから」と云われていた。1970年、初めてヨーロッパ旅行した時、遠く英国ボービントンのタンクミュージアムにわざわざ出かけたくらいなのである。その頃のスターリングのレイスター大学の建物を見ると同じくらい、タンクを直に見るといのは僕にとって大事な事だったのだ。初めてのタンク、それは蒸気機関車みたいな物を見たという印象が強かった。
そんないろいろある中で、T-34 というタンクがある。ロシアのタンク、第2次世界大戦中のソ連の戦車ってわけだ。僕はこのタンクが大好きなのである。
この T-34 が1941年に戦場に現れた時、それは世界最良のタンクであったのだ。強力な大砲、強力な傾斜した装甲、燃えにくく燃費のよいディーゼルエンジンで、単純で簡単な造り、全てのスペックで英独米国のタンクを凌駕していた。世界で一番たくさん作られ、つい最近まで実際に使われていたりして、というタンクなのだ。
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もちろん、その全体の設計の素晴らしさに、その性能は起因しているのだが、メカニズム・マニアとしては、そのディテールに面白い部分がたくさん発見できるのだ。
最近はインターネットや CD-ROM によって、たくさんの未知の資料が公開され、読んだり見たりできるようになった。そんな資料の中に、1944年、ソ連と連合国の一員であった英国に評価品として送られた T-34 を戦車技術学校で徹底的に調査し評価したレポート、 T-34 TANK Preminary Report No.2/0 がある。客観的な記述と美しい図解というすばらしい資料なのだ。

その中にタンク最前部の車輪(誘導輪というのだが)でキャタピラの長さを調整するメカニズム(Adjustment of tracks )の解説と美しい図解があるのだ。車体前面にある表面のボルト状パーツを外すと 内部に調整ナットがある。誘導輪のクランク状のシャフト部分と車体とは双方の歯形でかみ合うように、スプライン加工されたシャフトを平行移動させ、さきほどの調整ナットのウオームでギアを回転させ誘導輪の位置を変え。最後に内側の固定ボルトで完了する。少年時代、初めてこのウオームギァを知った時、ウオームの回転でギァは動くけどギアでウオームを動かすことができないということに、とっても納得したことがあった。
荒々しい工業製品を感じる T-34 であるが、こんなデイテールにエレガントな設計を見ることができるのだ。

「キャタピラ張度調整装置」というおよそマイナーな部分に、クランク状のシャフトをウオームギァで回 転させて距離を変えるというコンセプトは他に見たことがない。 T-34 だけの「美しい設計」というべき部分かと思う。 T-34 の原形は米国人発明家クリスティの コンセプチュァルなタンクなのだが、そんな発明家的な発想をこのタンクの随所に感じることができるのだ。
僕は、こんな機械の設計の「発明家」的な部分に大いに興味があるのである。
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タンクのメカニズムについての本って、マニアックな専門書か、児童書しかない。そんな中で、児童書の扱いだが T-34 のメカニズムを図解が載っている本がある。
STEPHEN BIESTY'S INCREDIBLE CROSS-SECTIONS の訳書
【輪切り図鑑・クロスセクション】 1992 岩波書店
「城」から「汽車」から「ビル」まで、なんでも輪切りにして図解しちゃおうという本だが、「タンク」の代表として T-34 が選ばれているのは、人事ながら誇らしい感じなのだ。興味深い図解とフェアな解説が楽しめる。

Posted by @ June 2, 2003 01:48 PM | TrackBack (0)
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