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江戸の崖 東京の崖

BOOKS

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デジタル鳥瞰 江戸の崖 東京の崖

著者: 芳賀 ひらく

ISBN: 978-4062692892
出版社: 講談社

価格: 1,890-円(税込)

地図系出版の雄「之潮(コレジオ)」の芳賀さんが、最近、崖づいていると聞いていたが、その芳賀さんの新著である。

「江戸の崖 東京の崖」なるものなのだが、最初の「デジタル鳥瞰」に驚き、中を開いて、カラフルな図番の多さに驚くのだ。芳賀さんって、デジタル、カラフルからはほど遠い人物であるというのが定評なのだ。

崖といえば、反原発デモで首相官邸前に向かう時、地下鉄・溜池山王駅からデモ地点に向かう時、首相官邸の裏側は急峻な崖であることを発見して以来、私には妙に親しいものとなっていたのだ。

本書は「崖」という地形の一形態、それを江戸、東京という時空間に縦横無尽に論じ、昨今の軽薄な凸凹地形ブームに一石投ず……という意図の基に書かれた。そして「3.11」の衝撃を、氏として総括しようというものなのだ。


目次
     崖を見に

 第1章 江戸の崖 東京の崖
     崖の所在
     江戸・東京の特異な崖

     コラム(1) 東京の崖考察の基本資料
     コラム(2) 崩壊地形用語と「崖線」

 第2章 「最も偉大」な崖 ー日暮里周辺ー
     海食崖と崖線
     撮影ポイント     
     移動する崖
     銚子ドーバーライン
     見えない崖
     屏風ケ浦と屏風浦

     コラム(3)  荷風の祠
     コラム(4)  日暮里の崖と小林一茶
     コラム(5)  崖上の踪跡、崖下の一茶
     コラム(6)  氷河性海面変動と侵食崖の生成
    
 第3章 崖棲み人と動物たち ー麻布ー
     我善坊町
     崖上の感情
     飯倉を望む窪地
     狸穴
     作家はどん詰まり地形を好む?

     コラム(7)  「バッケ」の現場

 第4章 崖沿いの道と鉄道の浅からぬ関係 ー大森ー
     駅前風景
     薬研と八景
     竪の坂・横の坂
     
 第5章 崖から湧き水物語 ー御茶ノ水ー
     御茶ノ水
     赤壁
     江戸の崖絵
     富士は見える?
     架空の視点

     コラム(8)  「江戸名所絵図』にみえる国府台の崖

 第6章 崖縁の城・盛土の城 ー江戸城ー
     太田道灌の城
     『山城』だった江戸城
     「江戸以前」の崖っぷち
     盛土の崖
     切土の城・盛土の城

     コラム(9)  平川の流路
     コラム(10)  「清正がつくった」石垣と崖

 第7章 切り崩された「山」の行方 ー神田山ー
     神田山と日比谷入江
     埋め立てた土はどこから
     露出する崖
     神田山「ひきくづし」の跡

     コラム(11)  江戸最古の坂
     コラム(12)  九段坂は崖だった

 第8章 崖の使いみち ー赤羽ー
     崖の集中地区
     指定地区
     崖公園と清水
     「危険個所」と地図
     危険区域

     コラム(13)  「縄文地図」のトリック

 第9章 論争の崖 ー愛宕山ー
     崖上の眺望
     推測と実証と
     愛宕山「登岩」の謎
     愛宕眺望の謎

     コラム(15)  霊廟の崖
     
第10章 「かなしい」崖と自然遺産 ー.世田谷ほかー
     国分寺崖線の「ノゲ」
     崖の精・池の精
     崖の変容
     もうひとつの崖ー府中崖線
     府中崖線の「かなしい坂」

     コラム(15)  崖下にあった国分寺村
     
第11章 隠された崖・造られた崖 ー渋谷ほかー
     宮益坂と道玄坂
     百軒店崖
     神泉谷
     谷葬・崖葬
     三つの「地獄谷」

     コラム(16)  崖と葬送
     コラム(17)  老人の崖 子どもの崖
     コラム(18)  「本物」の岩の崖

 最終章 愚か者の崖 ー「3.11」以後の東京と日本列島ー
     東京と日本列島の「特異性」
     集積の崖
     崩落の現場
     造成地の隠れた崖
     『明日』のために

     コラム(19)  「明日」の崖

     あとがき
     参考文献


のっけから「フクシマの地霊に」の献辞に驚かされたが、それは最終章の最後、江戸、東京という場所の事として導かれていく。

「……私たちに、「未来」ががあるとすれば、それは「集中」と「依存」にではなく、「分節化」と「独立」にしかありえないのはたしかなことなのです。」と一つの都市論として結論付けられるのだ。

このあたり……、今まで考えていなかった芳賀さん登場なのだ。


追記 121017

MADCONNECTION: 江戸の崖・東京の崖


追記 121020

10月20日(土)の「江戸の崖 東京の崖」重版記念「崖巡り」

本日午後2時/京成電鉄金町線/柴又駅改札を出た所集合。

川と崖の両方を堪能できる、柴又―矢切―国府台で、渡し船を下りて、オナモミの着く草はらを横切って行くことになります。

帰りは北総線矢切駅ですとコースとして短かすぎますので、里見公園に寄って、バスを使い京成本線の国府台駅まで出て、そこで「反省会」というコースです。

帰りに飲み過ぎると、とんでもないところに行ってしまう可能性がありますが・・・


Posted by 秋山東一 @ October 17, 2012 03:29 AM
Comments

iGa さん、本日もよろしくです。

Posted by: 秋山東一 @ October 20, 2012 10:55 AM

崖下の福島と崖上の女川...ゼネコンの免責も問題ですね。

Posted by: iGa @ October 17, 2012 09:06 AM