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福島の原発事故をめぐってーいくつか学び考えたこと

BOOKS

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福島の原発事故をめぐってーいくつか学び考えたこと

著者: 山本 義隆

ISBN: 978-4622076445
出版: みすず書房

定価: 1,050-円(税込)

「はじめに」……からして、氏の科学者としての立ち位置が揺らぐことはない。「東京電力福島第一原発一〜四号機が地震によって損傷し、津波により非常用電源が喪失し冷却機能が失われ、核燃料のメルとダウン(溶融)と水素爆発をつぎつぎひき起こし、多量の放射性物質が放出され、広範囲に飛散するという大事故が発生した。…………」と、この事故の原因は地震によるものと、元原発技術者であった田中三彦氏の言を基に、氏ははっきりと書く。

未だ、未曾有の天災の所為ということにして、今回の事故の原因を特定できない、しない多くの科学者、学会の立場とは異なるのだ。


目次
  はじめに

1 日本における原発開発の深層底流
  1・1 原子力平和利用の虚妄
  1・2 学者サイドの反応
  1・3 その後のこと

2 技術と労働の面から見て
  2・1 原子力発電の未熟について
  2・2 原子力発電の隘路
  2・3 原発稼働の実態
  2・4 原発の事故について
  2・5 基本的な問題

3 科学技術幻想とその破綻
  3・1 一六世紀文化革命
  3・2 科学技術の出現
  3・3 科学技術幻想の肥大化とその行く末
  3・4 国家主導科学の誕生
  3・5 原発ファシズム

  註
  あとがき


ほんの100頁、著者自ら「あとがき」に記してある通り、「みすず書房の編集部から雑誌『みすず』に原発事故についてなにか書いてくださいと依頼され、なんとか書いたのですが、少し長くなってしまいました。……」ということなのだが、著者の「いくつか学び考えたこと」は、米国の原爆開発マンハッタン計画から、現在に至るまでの日本の状況を明確に描きだしていく。

終章の「科学技術幻想とその破綻」は、氏の代表的著作である「磁力と重力の発見」を思わせる、科学技術史の観点から、「国家主導科学の誕生」が「原発ファシズム」へと変質していく過程が明らかにされる。

福島だけに限っても、原発の運転に異を唱えた福島県知事を冤罪に落とし込んでいくという国家の有様は「原発ファシズム」以外の何ものでもない。

 ● MyPlace: 「福島の原発事故をめぐって-いくつか学び考えたこと-」

Posted by 秋山東一 @ November 2, 2011 07:12 AM
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