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建築物を読みとく鍵

Architecture , BOOKS

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建築物を読みとく鍵 

著者: キャロル・デイヴィッドスン・クラゴー  Carol Davidson Cragoe
訳者: 鈴木 宏子

ISBN: 978-4882827092
出版社: ガイアブックス
価格: 1,890-円(税込)

本書は「How to Read Buildings: A Crash Course in Architecture」、まぁ、直訳すれば「建物の読み方:建築特訓コース」なる書籍の邦訳本である。基本的には西欧建築の入門書というべきものなのだが、16.6 ×13.4cmというかわいらしい版形のくせに、255頁で厚さ2cmという充実の内容なのだ。

本書は読むというよりは見る入門書である。全て図解、それも全て銅版画(現代建築はそうもいかないが)、それに近いレベルの図版で構成されているのだ。

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この見開きの104, 105頁は大項目「屋根と破風」の「古典様式」の頁だ。「勾配屋根の延長」「アンテフィックスとアクロテリオン」「トリグリフ」「彫刻付きペディメント」「ペディメントつきファサードと平らな屋根」なる5点の図版があり、その解説がある。
各大項目には「イントロダクション」なる概説があり、その後に見開きの小項目へと続くのだ。

入門書とはいえ、この充実ぶり、知らないことだらけ……、どこから見ても、どこから読んでも、楽しめて勉強になるのだ。


目次
はじめに
 建物を読みとく/手がかりの見つけかた

建築形式
 宗教的建築物/城と宮殿/住宅/公共施設/商業施設
様式の基本
 古代ギリシャ様式/古代ローマ様式/初期キリスト教&ビザンチン様式/ロマネスク様式/ゴシック様式/ルネサンス様式/バロック&ロココ様式/パラディオ様式/新古典様式/ゴシック復興様式/19世紀後半/モダニズム
建材
 石材/レンガ/石細工による装飾/木材/鉄と鋼/コンクリート/ガラス/屋根ふき材/外装材/内壁材/天井/床材
柱&柱頭
 古典様式/初期キリスト教様式/ロマネスク様式/ゴシック様式/ルネサンス&バロック様式/復興様式
アーチ
 形/ロマネスク様式/ゴシック様式/ルネサンス&バロック様式/復興様式/近代
屋根&破風
 古典様式/ロマネスク様式/ゴシック様式/後期ゴシック様式/ルネサンス様式/バロック&ロココ様式/新古典様式/ヴィクトリア朝&現代様式
ヴォールト
 半円筒ヴォールト&交差ヴォールト/リブ/リブの構造/バットレス/ファン
ドーム
 構造/シンプルなドーム/複雑なドーム/クーポラ&ランタン

 防御施設/教会/鐘楼/尖塔&尖り屋根/小塔&小尖塔/都市
ドア&ポーチ
 ギリシャ&ロマネスク様式/ポルティコ/ロマネスク様式/ゴシック様式/ルネサンス様式/バロック&ロココ様式/新古典様式/19世紀/現代様式

 ギリシャ&ローマ様式/ロマネスク様式/ゴシック様式/後期ゴシック様式/ルネサンス様式/バロック&ロココ様式/パラディオ様式/新古典様式/ヴィクトリア様式/商業施設/現代様式
階段
 構造/中世時代/ルネサンス様式/バロック&ロココ様式/新古典様式/復興様式/現代様式
煙突&暖炉
 中世時代/ルネサンス&バロック様式/新古典様式/19世紀/20世紀
装飾
 人物像/動物像/葉飾り/花模様/幾何学模様/オーナメントとしての建築構造/モールディング/装飾オブジェクト

用語解説
索引


これは、とてもいい本です。建築好きの一般人を対象にしたものと思いますが、建築学生も建築専門家も……必携、価格もとてもリーズナブルでありますです。
インデックス的な内容なのだが、建築部位の大項目、例えば「階段」で、構造から始まって、手すり子(バラスター balusters と言うらしい)の詳細、現代に至るまでの各時代の階段についての図解解説が読めるなんて、なかなかない本であります。

Posted by 秋山東一 @ October 26, 2009 12:42 AM
Comments

玉井さん、どうもです。
毎度……でございますです。ほんと、いい本ですよね。

Posted by: 秋山東一 @ October 29, 2009 05:29 PM

わたしにも、昨日とどきました
大きさ、厚さ、左手にもったときの重さと手ざわり
開いたページも、とてもいい感じです
タイトルのフォントについては、ぼくも惜しいなと思いました
でも、愛情をもてる本です。
机の左隅に、いつも置いています。

Posted by: 玉井一匡 @ October 29, 2009 01:07 PM

そうそう、kawa さん、忘れていた。
たしかに、書名の書体は気になりますね。

Posted by: 秋山東一 @ October 29, 2009 10:11 AM

kawa さん、どうもです。
この本について玉井さんと電話で話した時、玉井さんが「この本って字が大きいんですね」と言われたので、「いゃ、本が小さいんです」と答えました。辞典の一項目を見開きで見るように本の大きさがデザインされているんですね。優れたデザインと感じいります。

Posted by: 秋山東一 @ October 28, 2009 11:14 PM

今日届きました。
魅力的な大きさです。
本にも縦横高さが大事と認識しました。
内容も素敵です。

タイトルは素人が明治洋館を有り難がる時の字体に思えます。
これのが売れるんでしょうね。普通の明朝が良かったな。

Posted by: kawa @ October 28, 2009 01:39 AM