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生物と無生物のあいだ

BOOKS

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生物と無生物のあいだ
講談社現代新書 1891

著者: 福岡 伸一

ISBN: 978-4061498914
出版: 講談社
価格: 777-円 (税込)

栗田さんのブログ「 CHRONOFILE 」のエントリーを見て本書の存在を知った。しかし、特に読みたいと思ったわけでもなく、なにかのついでに手にしたくらいなのだ。

しかし、冒頭のニューヨークの観光案内と見紛うような文章から、ぐんぐんと引き込まれるように本書に夢中になってしまった。

その記述はいつの間にかロックフェラー大学の野口英世の胸像から、彼の現代での評価からある病気の病原体を特定する方法から、ウイルスの発見まで淀みなく続き、そして再びロックフェラー大学の研究室へと戻り、オズワルド・エイブリーが遺伝子の本体はDNAであることを発見したことへとすすむ。
そこから、ワトソンとクリックのDNAの二重ラセン構造の発見へとつながってくる。途中、研究者生活とは、研究とはどんなものなのかにふれながら.......読まさせてくれるのだ。

第8章、理論物理学者シュレディンガーの「なぜ原子はそんなに小さいのか?」という問いかけから、本書の後半は始る。


 目次
     プロローグ
第1章  ヨークアベニュー、66丁目、ニューヨーク
第2章  アンサング・ヒーロー
第3章  フォー・レター・ワード
第4章  シャルガフのパズル
第5章  サーファー・ゲッツ・ノーベルプライズ
第6章  ダークサイド・オブ・DNA
第7章  チャンスは、準備された心に降り立つ
第8章  原子が秩序を生み出すとき
第9章  動的平衡とは何か
第10章 タンパク質のかすかな口づけ
第11章 内部の内部は外部である
第12章 細胞膜のダイナミズム
第13章 膜にかたちを与えるもの
第14章 数・タイミング・ノックアウト
第15章 時間という名の解けない折り紙
     エピローグ

自己複製するものとして定義された生命は、ルドルフ・シェーンハイマーの発見「身体構成成分の動的な状態」によって、「生命は動的平衡にある流れ」として再定義されることになるのだ。

最後のエピローグ、著者は千葉県の松戸での少年時代を回顧しながら.......本書を終えるのだ。
やぁ、生物学に無縁な私にとっても、実に巧みにのせられ...........面白い読書であったのだ。

 ● CHRONOFILE: 生物と無生物のあいだ
 ● MADCONNECTION: 生物と無生物のあいだ


追記 090922

MyPlace の玉井さんも、最近になってお読みになった。

 ● MyPlace: 「生物と無生物のあいだ」


Posted by 秋山東一 @ May 19, 2008 12:17 AM
Comments

玉井さん、どうもです。
この福岡伸一なる方、その後、破竹の勢いで本を書いておられますね。さきほど、書店にて「世界は分けてもわからない」なる新書を手に取りましたが……、まずは……ちょっと落ち着いて……、と戻しておきましたです。

Posted by: 秋山東一 @ September 21, 2009 08:02 PM

いまごろになって、やっと読みました。
さまざまなレベルで知的好奇心を満たしてくれてほんとうにおもしろいし
生命としての自分自身について、そういうことだったのかと思わせるところがあって、目の前の霧が晴れたように感じました。
ぼくも、今日にでもエントリーしますが、「もう牛を食べて安心か」が楽しみです。

Posted by: 玉井一匡 @ September 21, 2009 06:34 PM

私も、ちょうど今、読んでいるところです。
ほんとに、うまいなあと思います。
事実関係のネタの豊富さと、敷き居が高そうな科学の世界を、ストーリーテラーさながらの巧みな展開と表現で書かれているのが、読んでいて楽しいですね。

Posted by: fuRu @ May 19, 2008 11:13 AM

yum さん、どうもです。
そんな前から玄人筋では話題だったのですね。しかし、この方、本当に上手ですね。ぐんぐんと引き込まれて夢中になってしまいました。上手いなぁ...と思ったのは、政治学者の原武史の鉄道エッセイ以来です。

Posted by: 秋山東一 @ May 19, 2008 09:58 AM

わかりやすい、というのは大切なことかもしれませんね...。

Posted by: たかさん @ May 19, 2008 09:42 AM

akiさま

この本は、去年あたり、はじめは分子生物学や免疫学をやっている研究者の間で話題になっていました。教授様には逆らえない日本の研究環境と実力がものをいうあちらの世界とに自己を投影して、自虐的な愉悦にひたったり、はたまた、あのPCR法がゲッツという「サーフィン好きなポスドク」が開発したという秘話を仕入れて、院生あたりにちょっといばれたからでした。
それが、あれよあれよという間に、一般書店でベストセラーになってしまったので、へえ〜っと思っていました。
確か著者は「私は中年からスキーを始めましたが、最初にインストラクターが滑ってみせて、そのあと、私に滑らせるんですが、何でそんな当たり前のことが出来ないのだという目でみられるのがいやだった。それで、この本を書くにあたっては、当たり前と思われていることも、分かりやすく説明しました」と語っていたと思います。
文章も美しくしゃれているし、ストーリー展開もうまい。この辺が一般の人にも受けた理由ではないでしょうか。

Posted by: yum @ May 19, 2008 08:57 AM