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道具にヒミツあり

BOOKS

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道具にヒミツあり
岩波ジュニア新書 581

著者: 小関 智弘

ISBN: 978-4005005819
出版: 岩波書店
定価: 819-円(税込)

著者・小関智弘氏は元旋盤工にして作家であるという方だが、たくさんの著作の中で、我国の工業力を支える底辺の職人達、言い方を変えれば、工業力の先端の突出した部分を引っ張る職人達、その存在、その技術・技量とはどういうものなのかを紹介されてきた。

本書はその最新の一冊、「岩波ジュニア新書」の一冊なのだ。我々の身近にある道具の「ヒミツ」を探り、その道具の技術の世界を解き明かす。それも、そこの元となっている技術、職人の技量に光を当てようということなのだ。

ボールペンの先端のボールから始り、日進月歩の携帯電話、非球面レンズから、消ゴムに至るまで、そして、砲丸投げの砲丸に至るまで、その技術に係わる人間の技量と想像力の話なのだ。

たくさんの事例の中で、砲丸の話しが一番好きだ。あの何の変哲もない鉄の球だと思っていたものが、最初の鋳物の過程で一定の物ではなく、それを調整しながら削る旋盤加工によって作られていたものだというのを知った。それを一職人が作り出し、オリンピック入賞者の全てがその砲丸を使っているなんて、初めて知ったのだ。


目次
 はじめに
 1 ボールペンの球がよく回転するわけ
    ボールペンの歴史/正確な球の作り方/微細加工は日本の得意技/鉛筆や毛筆の意外な使われ方/筆とブラシ・意外な役目
    /触図筆ペンとは何か
 2 書いたものをどうやって消すか
    消ゴムいろいろ/修正液の元祖/修正テープを使ってみた/道路のセンターラインがテープに見えた
    /黒板消しの思い出
 3 メガネやカメラが軽くなったわけ
    非球面レンズってなに?/メガネ拭きはなぜよく拭けるか/国産メガネの90%は鯖江市で
 4 思いもよらないファスナーの使い道
    ファスナーへの信頼度/ファスナーの歴史/ところでこんな使い道も/たった一本の注文も
 5 ケータイのモデルチェンジを支えるもの
    小型化・軽量化が進む/はげしいモデルチェンジに対応/光造形システム/等高線を重ねて富士山をつくる/開発を支えた職人の技
 6 自転車を眺めて考える
    自転車の効用/超軽量自転車をつくる/パイプを自在に曲げる/型の不用なパイプベンダーも/チェーンと自転車の深い縁
    /チェーン活用のあれこれ
 7 よく鳴るギターのヒミツ
     ◆ 現代の名工をたずねる I 矢入一男さん
    日本発のブランドギター/ギターに音楽を聴かせる/新しい弦楽器で人気沸騰
 8 アスリートを支えるシューズ
     ◆ 現代の名工をたずねる II 三村仁司さん
    靴にキスをした/一番になりたかった少年時代/たったひとりでの挑戦/選手の注文は自分への信頼
 9 辻谷砲丸がオリンピックでメダルを独占したわけ
     ◆ 現代の名工をたずねる III 辻谷政久さん
    夜学に通った浅草っ子/独立してスポーツ用具づくり/砲丸のフシギ/重心と中心を合わせる/自分が表彰台に上がった気持
    /名工たちの知恵
10 提案型ものづくりが産業を支える
    発明は必要の母?/仕事が仕事を呼ぶ/世界一軽くて丈夫なカップ/直径0.03ミリのドリル

岩波ジュニア新書という若い人向けの新書だが、著者の記述も内容も決しておもねることはない。
しかし、この表紙はないよなぁ。本文に出てくる自転車の写真を表紙にしているんだけど、なんだかへっぴり腰で、こんな自転車の乗り方って変だなぁ。こんなカッコ悪い表紙じゃ、店頭で本を見て買う気が起こらないだろうなぁ。

 ● aki's STOCKTAKING: 職人ことばの「技と粋」

Posted by 秋山東一 @ January 7, 2008 12:08 AM
Comments

川好きonna さん、どうもです。
masa さん、wakkyken さんの「川の地図辞典」の記事でのコメントで、川好きのお二方を存じ上げております。お二方とも広範囲の守備範囲とお見受けいたしております。「川の地図辞典」がブログの力によって、大いに普及することを希望いたしております。

Posted by: 秋山東一 @ January 13, 2008 09:36 PM

小関智弘さんのファンなのです。3年前まで子どもたち相手の学習塾もやっていましたので、今も続けていたならきっと本書を購入したでしょう。匿名覆面のままコメントいたしましたが、私の正体はバレバレのはず。「東京物を出すなら小関智弘をすいせん」と手紙を下さった作家小沢信男氏にも「川の地図辞典」献本した所です。さて、どんな反応、が出てどんな展開となっていきますやら。すみません、今の所、この本までは手が頭が回らないのです。川好きotokoは道具大好き人間、地図描きの道具だけは一流職人並みだね、と昔、地図作り職人さんに言われていました。

Posted by: 川好きonna @ January 13, 2008 08:35 PM

neon さん、どうもです。
おっしゃるとおりですね。私もファンなんですけど、本書はちょっと忙しすぎるって感じではあります。

Posted by: 秋山東一 @ January 7, 2008 11:34 PM

小関さんの「鉄を削る」を読んでからすっかりファンになったのですけど、内容もとても面白いのですが文章がまたとても好いのですね。穏やかな語り口と解りやすさ。そしてぐいぐい読者に読ませてしまいますね。
この本も早速読みたいです。最後は機械でなくて人間の技、勘というところにいつも感動します。

Posted by: neon @ January 7, 2008 08:04 PM