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職人ことばの「技と粋」

BOOKS

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職人ことばの「技と粋」

著者: 小関智弘

ISBN: 4487801230
出版: 東京書籍

定価: 1,680-円(税込)

旋盤工にして作家という特異なキャリアーの作家、小関智弘氏の最新のエッセーだ。

氏のデビュー作は「粋な旋盤工」だが、今回、たくさんの職人言葉の中に、その「技」と「粋」を探りだそうというのが本書のテーマだ。

職人というとなんとなく工芸的な.....さすが氏の世界、職工の世界、機械工の言葉が多いのも面白いのだ。本書であつかわれている職人の仕事、職種は、旋盤工に代表されるような機械工から、鍛冶屋、大工、左官、植木職、鳶、菓子、経師、漆、和洋服、そして、スリまでと幅広いのである。

物を作る世界には、その技、その技術を人々に伝えようという言葉の数々があり、その語り口は謙虚でありながら、誇らしげな.......「粋」というべきものを感じさせるのだ。それがどの世界にもあるのが面白い。


目 次

第1章 育て上手
 【半竹】【秘伝】【恨みにつく】【道具箱】【二度学ぶ】【ウオッチ、リッスン、アンド、ドゥ】
 【マイスターの資格】【工師・範師・工匠】【宿老】【他人の飯を食う】

第2章 修業
 【追いまわし】【嫁入った晩】【空足】【空打ち】【行儀】【後工程はお客様】
 【ガタがガタを呼ぶ】【半端職人】【半職】【お礼奉公】【年季】

第3章 ひとり立ち
 【渡り職人】【渡り入れ歯職人】【渡り職工】【暖簾分け】
 【おやじ運】【ひとり親方】【工場長屋】【自転車ネットワーク】

第4章 粋に働く
 【粋なすり師】【粋な旋盤、小粋な仕上げ……】【チャック屋さん】【銘を打つ】
 【削る】【揉む】【マンガ】【気配り】【葦師の野帳】【空師】
 【つかみぼくろ・器用ぼくろ】【生き紐・死に紐】【ギターを寝かせる】【重心を音でさぐる】
 【手に馴染む】【下手の長糸・上手の小糸】【かぐや姫の難題】

第5章 手も動かせば宝
 【手は宝】【職人は五反の家督】【上手・下手】【手筋】【能なしのぐず】
 【手に記憶させる】【手ができあがる】【手ばくり職人】【手が枯れる】
 【手が嘘になる】【生業を支える手技】

第6章 「捨てる」という工夫
 【捨挽】【捨石】【捨鐘】【捨太鼓】【捨罠】【捨書】【捨湯】
 【捨漬】【捨コン】【捨漆】【捨絞り・捨穴】【捨桟・捨ボス】【畳で拾う】

第7章 「殺す」は「活かす」
 【殺す】【鋼を殺すな】【木殺し】【土殺し】【ころし篦】【靴の殺し】
 【刃先を殺す】【植うる剣】

第8章 愉快な仕事ことば
 【石が汗をかく】【鉄が汗をかく】【石が泣く・鉄が泣く】【褞袍を着せる】【クセを生かす】
 【地獄ほぞ】【石の声を聞く】【巻頭】【オシャカ】【ガンバラを吹く】【害材】
 【下駄をはかせる】【鉄にお灸をすえる】【鉄の縄跳び】【蟹がツメをおっ立てて】
 【カバのあくび】【ゆうれい線】【切れ味を耳で聞く】【鉋や鋸をあたためる】
 【筏地形】【お月さんの綱引き】【菓子折り付き】【逃げ仕事】【雪隠大工】
 【手切り、マラ出し、釘こぼし……】

第9章 数字のあることば
 【穴掘り三年、鋸五年、墨かけ八年、研ぎ一生】【一錐、二鉋、三手斧】【店番一年、あひる一年】
 【ズボンに四年、上着で五年】【運針一年、袖一年】【水まき三年、根まわし二年】
 【点彫り三年、筋彫り五年】【竹割り十年】【木六、竹八、壁十郞】【蝉は七年、木型は一生土の中】
 【七つ八つから】【糊十年、染十年】【四十八茶、百鼠】【一隅・二矩・三框】
 【一に芯、二に寸法で三に仕上げ】【鉄一トン、空気一トン】【段取り八分】【梁算段】
 【木型方案】【炭焼百仕事】【一夜事】

第10章 語源を覗く
 【おがくず】【だらいこ】【タコをやる】【かわりばんこ】【たたらを踏む】【火床】
 【切羽詰まる】【目貫通り】【折紙付き・札付き】【めっき】【鉸る・鈑金・熔接】
 【鐵工所】【いも車からガラへ】【サボる】【治具】

第11章 ハイテクに生きる手技
 【紅合わせ】【摺り合わせ】【キサゲ模様】【油だまり】【カンピュータ】

あとがきーー粋なことばに出会うよろこび

参考・引用文献


11章立てに114項、たくさんの心を打つ言葉がある。

そういえば、建築設計にも「物を作る世界の言葉」があるなぁ、【手で考える】とか【肩の幅で考える】とか、いい言葉だが、でも皆、これって製図板の前での話だなぁ。

【手に記憶させる】本文中(119頁)に、今のコンピュータを前にした我々設計者にダイレクトに響く言葉があった。
「機械は上手や。くたびれへん、汗だしよらん、涙も出さへん、失敗を肝に銘じよらん。」
ある刀匠の言葉だそうだ。

よって肝に銘じん。

Posted by 秋山東一 @ August 24, 2006 07:57 AM
Comments

iGa さん、まいど。

Posted by: 秋山東一 @ August 25, 2006 07:59 AM

あさみ編集長、どうもです。
これは関西弁じゃないと....いけませんね。

Posted by: 秋山東一 @ August 25, 2006 07:57 AM

ポチッと!
商売上手で!

Posted by: iGa @ August 24, 2006 10:07 PM

「肝に銘じよらん」に感銘を受けました。
含蓄のある言葉ですね。

Posted by: あさみ編集長 @ August 24, 2006 07:08 PM

毎度、iGa さん。
早く上の方をポチッとしないとなくなってしまいますぜ。だんな。

Posted by: 秋山東一 @ August 24, 2006 01:44 PM

新聞の書評欄で見て面白そうなので、本屋に行った時、チェックしようと思っていたけれど忘れてしまった。Amazonでポチる前に、忘れないように本屋で探してみよう。

Posted by: iGa @ August 24, 2006 10:34 AM