070506

狂気の遺産

BOOKS

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狂気の遺産

写真: リチャード ・ミズラック  Richard Misrach
文: スーザン・ソンタグ  Susan Sontag /訳者: 木下 哲夫

ISBN: 4796605630
出版: 宝島社 / JICC出版局
定価: 3,980-円(税込)

この写真集の邦題「狂気の..........」は最初からフィルターがかかってしまっているような印象だ。

ここにある写真の全ては、まさしく原題「 Violent Legacies 暴力の遺産」ということだろう。そこにあるのは静謐ともいうべき砂漠の風景なのだが、そこに残された人間の営みの傷痕は、まさしく暴力的なものなのだ。
それも、狂気の.......ではなく、正気の......であることの方が大きく心を動かす。

ここにある写真は写真家リチャード ・ミズラックが、米国西部の砂漠で撮ったものだ。

三部作の写真集、それらを貫くのは砂漠、そして暴力だ。
スーザン・ソンタグの「方舟からの眺め」なる童話仕立ての前書きから写真集は始まる。

● project w-47 (the secret)

1945年8月の広島・長崎への原爆投下を前にして、その準備、爆弾の組立、飛行テストが行われた Wendover ウェンドーヴァー空軍基地の今の風景がある。そこで行われた [project w-47] と呼ばれた計画の詳細は今もって機密事項なのだ。

● the pit

核実験により大量死した動物達の墓場、その被爆の実際が明らかにされることもなく、そこは今もって動物の死体集積所となっている砂漠の風景だ。

● the playboys

射撃の的として使われ砂漠に放置されたプレイボーイ一冊だ。その夥しい弾痕と、それに重なるアメリカの象徴としてのプレイボーイ誌の写真だ。


先日、ちょこっと神保町にいた。古本屋街を散策中、本書を店頭のバスケットに発見......ゲットしてしまったのだが、いろいろ蔵書の整理中.....というのに増やして...どうする......というところだが。

Posted by 秋山東一 @ May 6, 2007 04:13 AM
Comments

ふと思うのですが、たとえば、project w-47=狂気なら、営利優先の品格を欠いた遊園地経営(今回は営利企業ではないようですが・・)もなんかそれに近いような気がしてなりません。。。

Posted by: アプ @ May 7, 2007 01:48 PM