070615

日本人の住まい

Architecture , BOOKS

東京都府中市の「府中市郷土の森博物館」で「宮本常一の足跡」と題する特別展が、7月1日(日)まで開催されている。宮本常一生誕100年記念事業であり、博物館の開館20周年記念だそうだ。

多くの資料によって、民俗学者・宮本常一の生涯と業績が紹介されている。氏は学術的な民族調査の人というだけでなく、山村や離島の振興、民族芸能の復興と多岐にわたる活動、運動を行ってきたことを知ることになる。
宮本常一が武蔵野美術大学教授であったことは知っていたが、1961年から亡くなるまでの晩年の20年間を府中市民であったことを初めて知った。

MADCONNEDTION: 「宮本常一の足跡〜旅する民俗学者の遺産〜」

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日本人の住まい—生きる場のかたちとその変遷
百の知恵双書 (013)

著者: 宮本常一

ISBN: 4540040818
出版: OM出版/農文協

定価: 2,800-円(税込)

何度かご自身のブログ komachi memo2 に本書について書かれていたが、真鍋さんの企画・編集した宮本常一の「家」の本だ。
それも建築学や建築史学から民家を論じたというような内容ではなく、あくまでも人の視点から、家、生活、暮らしを見て、民家を書きつづったのが本書だ。
民家の原点、土間住まいと床住まいがどう結びついたか、納戸、寝室の起源、便所と風呂に至るまで過去から現在に至る変遷が語られる。


目次
第1部 日本人の住まいはどうのように変わってきたか

   土間住まいと床住まい  土間と床の結婚
   藁葺き屋根と板葺き屋根  瓦屋根の出現
   門と垣の発達  シトミ戸から障子へ
   すわる習慣と畳  納戸と寝室
   消えゆく縁側  町家と暮らし
   戦後社会と団地

第2部 暮らしのかたちと住まいのかたち

   能登の旧家 ー能登の旧家は大きい。どうして大きな家におおぜいで住んだのだろうー   
   土間の広い家 ー東日本に多かった土間の広い民家。こうした家はどのような使われ方をしていたのだろうー
   土間住まい ー土間に筵を敷いて暮らす土間住まい。土間住まいの名残は近年まで民家に残っていたー
   土間の狭い家 ー土間の狭い家も日本各地にあった。そこでどのような暮らしが営まれていたのだろうー
   二つの家 ー土間の家と高床の家。二つの家が結びつくと土間も床もある家になるー
   寝間と家の神 ー神聖な空間だった寝間。家の神は住まいのかたちにどんな影響を与えてきたのだろうー
   カマドとイロリ ー日本人の住まいと暮らしはイロリとカマドとともにどう変わってきたのだろうー
   家作の統制 ー旧藩時代に各藩がとった家作の制限は民家の構造にどんな影響を与えたのだろうー
   客間の発達 ー生活の向上と変化の中で、客を迎える場を住まいはどのようにしてもつようになったのだろうー
   便所と風呂 ー便所と風呂が住居の一部としてはっきり位置を占めるのはいつ頃からだろうー

   あとがき
   たあとる通信


本ブログで紹介しようとしながら、どんどん時間が経ってしまった。宮本常一の著作の数冊を読んだだけで、本書の紹介はおこがましい.......なんて考えていたのだが、府中の博物館の展覧会を見て吹っ切れた。

aki's STOCKTAKING: 忘れられた日本人

Posted by 秋山東一 @ June 15, 2007 09:25 AM
Comments

東京町家さん、どうもです。
府中市民としての宮本常一がいた....ということは大事なことですね。今回のミュージアムも立派で、展示物に宮本常一の意志みたいなものを感じました。

Posted by: 秋山東一 @ June 22, 2007 08:07 AM

私が宮本先生に教わったときは、先生は府中市民でした。
府中の街づくりにも提言していて、近隣市町村が開発指導要綱で最低区画面積を100㎡とする中、府中市は150㎡としていました。
屋根を越す木を育てるには、最低150㎡の敷地が必要というのがその理由。200㎡にすると、将来土地の細分化が進む可能性があるので、150㎡にしたと話していました。
屋根を越す木がないと、街に緑が見えないと言っていました。
府中の住宅地がなんかのんびりした感じがあるのは、宮本先生の業績かもしれません。

Posted by: 東京町家 @ June 22, 2007 12:29 AM

komachi さん、どうもです。
府中市郷土の森博物館のミュージアムショップにも本書が平積みになっていました。
展覧会の展示は展示なのですが、紀伊国屋書店が作った宮本常一紹介の1時間ほどのDVDが上映されていました。これがとても良くできていて、よく理解できました。網野善彦が宮本を語っていましたが、その優しそうな表情に宮本の業績に対する高い評価を感じました。

Posted by: 秋山東一 @ June 16, 2007 02:31 PM

akiさん、府中の展覧会、行こうと思いながらなかなか行けません。紹介ありがとうございます。おかげさまで初版は農文協に200部ほどしか残っていないようで、急遽2刷りのための校正を昨日終えたところです。

Posted by: komachi @ June 16, 2007 02:11 PM