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湖上の家、土中の家—世界の住まい環境を測る

Architecture , BOOKS

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湖上の家、土中の家—世界の住まい環境を測る
百の知恵双書 (012)

著者: 益子義弘+東京芸術大学益子研究室

ISBN: 4540040790
出版: OM出版/農文協

定価: 2,800-円(税込)

テレビ番組「世界不思議発見」なんてので、「秘境.......」として面白おかしく登場することはあっても、その家々、環境が、学術的な目によって明らかにされていくなんて、今まで考えられなかった気がする。世界は着実に狭く、その細部は明らかになっているのだ。

芸大建築科の先輩・益子教授と研究室が、ずっと続けてこられた世界の住居の環境調査「ほんとうにそうなのか、どれくらいそうなのか」という研究成果が一冊の本になった。真鍋編集長の仕事である。

ペルー・チチカカ湖、浮島上の草の住まい、イランの砂漠の土の住まい、スペイン・アンダルシアの崖下の住まい、ベトナムの.......その大いなる環境の違いの中で、人類はずっと住み続けてきた、その空間を実測し、環境を計測した報告書なのだ。

益子さんは、序文でこの研究のきっかけが Bernard Rudofsky バーナード・ルドフスキーの著作「Architecture without Architect(邦題・建築家なしの建築)」であると明かされている。あの学校の同じ世界で同じ空気を吸ってきた者にとって、あの本を見た驚きを昨日のように思い出す。


目次

第1章 砂漠地帯の民家を調べる-イラン・キャヴィール砂漠周縁

 テヘランから南へ
 市街の家・村の家-カーシャーン
 ゾロアスター教の合宿所-ヤズド
 強固な住まいのやわらかな暮らし-旅から受けた示唆1

第2章 湖上の葦草の家とアドベの家を調べる-ペルー・チチカカ湖周縁

 葦草の島と家-ウロス島群
 石とアドベの家
 場所や建築の強度とは何だろう-旅から受けた示唆2

第3章 地中の家、崖下の家を調べる-スペイン・アンダルシア地方

 アンダルシアの二つの村
 地中の住居群-グアディクス
 崖下の住居群-セテニル
 白い被膜がはたらく力-旅から受けた示唆3

第4章 囲みの家、篭の家を調べる-ベトナム・ハノイ近郊農村とホイアンの町家

 ベトナムの村と家
 住まいのかたちを決める二つの側面
 家々の閉鎖性と涼感のありか-旅から受けた示唆4

第5章 民家のかたちと気候
四地域の住まいの温熱環境を比較する


本書に、一つの自然環境から一元的に導き出された合目的な人工的な環境、そんな単純な結論を期待すると大いに裏切られるであろう。人間はもっともっと多様でキャパシティの大きな生き物であるらしい。

Posted by 秋山東一 @ November 16, 2006 10:32 AM
Comments

komachi さん、どうもです。
正直なところ、私はそんな結論を得られるんであろうと思っていたので........とんでもありませんでした。
ホームレスの皆さんのホーム、段ボールのシェルターでも生きられる人間と、高気密、高断熱のシェルターとして生きている人間と同じであると言うこと自体、驚異ですね。

Posted by: 秋山東一 @ November 16, 2006 07:51 PM

Akiさん、詳しく紹介していただき感謝です。「一つの自然環境から一元的に導き出された合目的な人工的な環境、そんな単純な結論を期待すると大いに裏切られるであろう。人間はもっともっと多様でキャパシティの大きな生き物であるらしい。」確かに。先日、ベトナムに行ったある先生が帰ってきて、ベトナムの民家は涼しいと感激していました。彼は益子チームとは異なる体感の印象を受けたわけですが、どちらがおかしいということではない。温熱環境は奥が深いですね。

Posted by: komachi @ November 16, 2006 06:19 PM