050707

国家の罠

BOOKS

4104752010.jpg


国家の罠
外務省のラスプーチンと呼ばれて

著者: 佐藤 優


ISBN: 4104752010
出版: 新潮社
定価: 1,680-円(税込)

いつもなら、この手の本、まだ歴史ともいえない進行中の日本国の政治の内幕のドキュメンタリーを読みたいとは思わないし読むこともない。しかし、「国家の罠」なる表題が気になった。

3年前に世の中を騒がした、いわゆる「鈴木宗男事件」の当事者である外務官僚の佐藤優の手記である。その後のたくさんの事件に紛れて、すでに忘れられようとしているかのように感じられるが、それは裁判という形で今もなお進行中である。

あの頃、外務省の不祥事が続き、対ロシア外交政策の中での鈴木宗男と外務官僚の不正という感じで、どうせ、そんな風に政も官も民もみんなつるんで悪いことやってるんだから....と思っていた。それがどのようなメカニズムをもっていたのかが、ちょっと理解できるようになった気がする。
あの時の、鈴木宗男の気色悪さも、報道されたその全ての外見に偽りがなくても、その実際はずいぶんと異なったものなんだ。

その時、どんな外交的な目論見が進行中であっても、それがどんなに志が高くても、その政治的な駆引きの中で、鈴木宗男を外すという政治的転換が実行される時、それは犯罪であり、それは背任であり偽計業務妨害であり、逮捕なのだ。
検察官は「これは国策捜査だ」と彼に告げ、「闘っても無駄だ」ということを理解させようとする。
国策捜査、犯罪をどうのという問題ではない、それは初めに結論ありき、一つの政治的ショウであり政治的転換を作りだすためのものなのだ。

彼は闘う。国策捜査に闘いを挑む。有能な外交官の優秀な頭脳を駆使して、この国策捜査を担う有能な検察官と闘う。
2002年5月逮捕から、1年半余り、512日間拘留されるも、挫けることはない。
その拘留中の拘置所の生活の細部、グルメ等々の記述、厳しい生活の中にもユーモアを忘れない。

彼が鋭く分析する、この政治的転換以降の日本、政治の有様、社会の有様、国際的な有様、それは厳しく危険に満ち満ちているものだ。

今年、2005年2月第一審判決(懲役2年6ヶ月執行猶予4年)、即日控訴。

Posted by 秋山東一 @ July 7, 2005 10:22 AM
Comments