鉄槌! | [ BOOKS ] |
いしかわじゅんさんの「鉄槌!」を一気に読んだ。面白かった。
鉄槌!
著者: いしかわじゅん
ISBN: 4041795044
出版社: 角川書店
定価: 660-円(税込)
志賀高原でスキーを楽しんだいしかわじゅん一行が、ちょっとした事情によって夜行スキーバスによって帰京することになる。
途中、そのバスがあろうことかトイレに立った一行を置いてきぼりにしてしまう。厳寒の吹雪の中に取り残された一行は、偶然きた次のバスで、置いてきぼりにしたバスに追いつくことができた。しかし、そのバスの乗務員からも、バス会社からも何の謝罪を受けることはなかった。
いしかわじゅんさんは怒った。そういう筋の通らない話はきらいだ。そして、その顛末を漫画にした。最後の一コマに描いた「オレは2度とビックホリデーなんか利用しねーからなっ!! バカヤロー!!」
ほどなく、そのバス会社から内容証明郵便で通告書が"石川"じゅんの元に届く。その記事について謝れというのだ。その通告を無視されたバス会社はいしかわじゅんとその出版社を相手に100万円の損害賠償を求めて裁判を起こしたのだ。
いしかわじゅんさんは怒った。「怒りのランボー」と化したのだ。
その怒りは、怒りの始まりに過ぎなかった。
その裁判に怒り、その弁護士達に怒り、弁護士達の文章に怒り、出版社に怒り、その経過に怒り、最後には偽の証人の登場にまで怒らねばならないのだ。
彼の望む「菓子折りさげて、あやまりに来る」という様にはいかなかったが、それは最終的な和解、いしかわじゅんの曖昧な勝利に至るまで続くのだ。
この話を読んで怒らない人はいない。いしかわじゅんさんが特別に怒りっぽい人ではない。ただ、筋を通す人なのだ。
ここに出てくる弁護士達ってなんなんだろうか。自分の役割とこの仕事の全体を語り、一つ一つの処理をクライアントであるいしかわじゅんに何の説明もしない。その言語能力は弁護士という職能のレベルまで見透かされてしまっているのだ。裁判自体も関係者皆こぞって大過なく収めたいという気分むんむんなのだ。
いしかわじゅんさんは、私にとってもクライアントであった。彼の住宅を設計させていただいたからである。うーむ、ちゃんとした設計者の役割を果たしたであろうか、果たしているであろうか心配だ。