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住宅全書

Architecture , BOOKS

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「住宅全書」主婦の友社刊、昭和33 (1958) 年刊行、手元にあるのは昭和38 (1963) 年の45版、定価1,200円というものだ。

半世紀も前の本だが、出版社からして分かるように専門書ではない、一般の人向けの本なのだ。A5版の987頁(厚さ45mm)という大部な本でなのある。

その昔、1963年、私が藝大建築科2年生で、課題「住宅」が始まったた時、教授の吉村順三が「君たちはこんな本は見ているのかい」と言っていた……、その時、手に入れたのだった。

編集委員は蔵田周忠、高田秀三、はじめ総勢6名、そうそうたるメンバーと思える(私も知らない建築家達なのである)。

執筆者となれば60余人、建築界の賢人累々という、吉田五十八、堀口捨巳、西山卯三、今和次郎、剣持勇……等々、同じ執筆者に名を連ねていても清家清や菊竹清訓なんてペイペイもいいところなのである。

まぁ、住宅の広辞苑という感じのものなのである。まだ、戦後という時代……、設備としてあるのはガス湯沸器くらいか、それに、熱環境的な話しは皆無、気密も断熱もない時代だ。ソーラーシステムもない……。テレビもないし、でも使用人室なるものがある。

そうそう、ハウスメーカーなるものもない。

しかし、詳細にわたる設計の考え方の記述は、今もって住宅設計の教科書というべきものなのである。

じつに実際的、そして先鋭的な情報も当り前のようにならんでいるのだ。「便所の位置を考えるのに、いちばんたいせつなことは・・・」という記述からフィリップ・ジョンソンの「ガラスの家」まである、というのが凄い。

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目 次
はじめに

すまい方篇 住みよい家にするために

 出入りする場所 玄関
 だんらんの場所 居間
 休息の場所 寝室 老人室 使用人室
 子供のための場所 子供室
 食事をする場所 食事室
 家事労働をする場所 台所 勝手口とサービスヤード せんたく場 ユーティリティー
 衛生の設備 浴室 便所 洗面所
 接客の場所 応接室 床の間
 作業する場所 書見の場所と書斎 作業室
 へやを接続する場所 廊下・縁側 階段
 収納の場所 納戸・押入
 庭と接続する場所 テラスとサンデッキ サンルーム 日よけ
 特別の場所 屋根裏 地下室 屋上 車庫

建築篇 家をつくる人のために

 家をたてるための準備 住宅資金の作り方と使い方 敷地の選び方、買い方、借り方 工事にかかるまでに心得ておくこと 住宅を設計するには
 しろうとが知っておきたい住宅の構造と仕上げ 住宅の形 住宅の構造 住宅の仕上げ 建具の知識
 しろうとが知っておきたい材料と塗料の知識
 家ができるまで工事のどこに注意すればよいか 土地と家屋の紛争
 どうすれば安く建てられるか
 住宅を災害から防ぐには
 住みよい家にするための装備 家具 室内の色彩とアクセサリー 照明 設備

庭園篇 庭をつくる人のために

家事篇 新しい家に住む人のために

 新築してすぐしなければならない手続き
 新築してすぐかかる費用
 新築後、年間予算しておきたい費用

増改築篇 古い家に住む人のために

 補修改造をしたい人のために
 増築をしたい人にために

 家を買う人のために

アパート篇 新しい生活様式のために

特殊な住宅のために
 農村住宅 併用住宅 民家 茶室と数寄屋 週末住宅 寒地住宅

日本の住宅の移り変り

住宅用語の解説150集
索引


追記 140901

Jyutaku-Zensho_466.jpgなぜ、こんな古い本を引きずり出したのかというと、設計道場等で見かける住宅計画案に「日当たり」「日照」を考慮していない計画案が散見されるからなのだ。

自分自身では当り前のものと考えている、南に空地をとる……という常識は、昔はどのように教えて……というか、伝えていたのかを知ろうと思ったからなのだ。

本書で、唯一の記述は512頁「建物の大きさのきめ方と敷地の中での位置」、上の写真の頁である。

左は本書466頁「敷地の選び方、買い方、借り方」の挿絵である。もちろん、その記述「道路は南に……」の前に「敷地が小さいときには、……」とある。


Posted by 秋山東一 @ September 1, 2014 09:41 AM
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