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最後の最後の……歴史上の事実、ナチスへの抵抗者の自決へと向って時間は収斂していくのだ。
久しぶりの濃密な読書体験に、何か遠くを見る……。
そのハイドリヒは占領地チェコ統治の為、1941年9月、ベーメン・メーレン保護領副総督として赴任する。それからの反ナチス勢力に対する拘束と処刑、その残酷な支配によって「プラハの虐殺者」の異名をとる。
1942年4月27日、英国と在英チェコスロヴァキア亡命政府によって送り込まれた二人の亡命チェコ軍の落下傘兵によって、ハイドリヒは襲撃される。
その後、それが原因で6月4日死亡……、ナチスの復讐が始る。
本書は、その暗殺事件の当事者、ハイドリヒと暗殺者であるヨゼフ・ガプチーク軍曹、ヤン・クビシュ軍曹の物語なのだ。
第 Ⅰ 部
散文作家の思考が新たに〈歴史〉という樹にきずを付けているが、野生動物を持ち運びできる檻に押し込める策略を見つけるのはわれわれの仕事ではない。
オシップ・マンデリシュターム『小説の終焉』
第 Ⅱ 部
気がかりな噂がプラハから届く。
ゲッペルスの日記 1942年5月28日
訳者あとがき
歴史的事実という客観と、著者の主観……小説を書くという行為そのものが、重層的に重なり合って、スタックされていくのだ。
ノンフィクションとフィクションをないまぜにしたような、歴史的な事実というノンフィクションと、著者自身が小説を書くという行為のノンフィクションを同時に進行させたような小説なのだ。
まぁ、言うなれば……、映画の本編とメーキング映像が一緒になっているような……。
プラハには1996年の2月に出かけ、5日程滞在したことがある。ソビエトロシアに支配された第二次世界大戦終了後の歴史に大いに興味を持っていたが、第二次世界大戦中のナチス占領下のこのような事件について知らなかったのは迂闊であった。