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Pelikan Graphos

Stationery

graphos_0.jpg Open

ターコイズブルーというのか........青緑色のプラスチック製の小さなケースである。

Pelikan Graphos というカリグラフィー用のペンなのだが、烏口の代わりの図面の墨入れ(インキング)のお道具として、1962(昭37)年、芸大の建築科に入学した時に支給された製図用具一式の中に入っていたものなのだ。

その頃の芸大建築科の課題図面は全てA1ケント紙の上に墨入れという.......ボザールの伝統というべきものだったのだ。少なくとも、このお道具は、烏口よりも近代化した物であり、墨入れ作業を楽にしてくれたのは確かなのだ。

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ケースの中には、昆虫みたいなスティール製のペン先が六個入っている。0.12, 0.2, 0.3, 0.6mm は烏口型で、二枚の刃のペン先、0.8, 1.25mm は幅広の平型のペン先である。
支給された時は四個だったと思うが伊東屋で買い足したのだ。結構高価であった。

そのペン先をインク容器を兼ねたペン軸の先端に装着して使用する。あくまでも万年筆であって、浸けペンではない。ロットリング登場以前のレタリング用、製図用の万年筆の役割をするものであった。

ペン軸は何の変哲もない筒型だが、直径10mm、ペン先を装着した使用時の長さ130mmちょいというところで小型である。
昔は黒かったものが今は茶色に変色している。これはエボナイト製であるためだ。棒状のエボナイトを機械加工しているという、なかなか高級なものなのだ。

この Pelikan Graphos が登場したのは1938年......ずいぶんと昔からあるものなんだ。
今もって、そのペン先だけだが、デッドストックが手に入るようだ。スエーデンの画材屋さんだ。

 ● GRAPHOS PEN and nibs - Pelikan Indian ink drafting fountain pen


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graphos_4.jpgひどくズズボケているが 0.3mm のペン先の使用時の状態である。烏口と同じく二枚の刃がある。

下の刃の真ん中にある穴から、毛細管現象によってホルダー内のインクが供給されるが、書き始めにはこのように、上の刃を廻して、呼び水になるようにインクを刃先に載せる必要がある。

刃の部分がオープンの所為でほっておくとすぐ乾いてしまうのであった。ロットリングに比べて描線は美しいが、なかなか気を使う道具であった。


Posted by 秋山東一 @ December 22, 2008 01:58 AM
Comments

少しでもお役に立てられれば幸いです。
ロットリング製図ペンは文字用テンプレートと同時に開発されたのではないかと想像しています。
ロットリングのセットには製図ペンを直立させるアダプターが付いていました。これは、ISO文字のテンプレートを使う為のものだと思います、線を引くのに使った事はありません。

Posted by: 秋山東一 @ May 27, 2012 11:49 AM

ありがとうございます。烏口コンパスが主力だったんですね。

 ロットリング製図ペンがグラフォスに取って変わる存在になったのは、コンパスともテンプレート(インクエッジつき)とも連係できるため、と思っていたのですが、ペン先を付けたままキャップを閉められる手軽さがその理由だったのかなと。
 製図器の変遷をちょこちょこ調べており、たいへん助かりました。ありがとうございました。

Posted by: 魚眼 @ May 26, 2012 05:06 PM

魚眼さん、はじめまして、こんにちは。
そのあたり抜かりなく、グラフォス用のコンパス・アダプターがあったと思います。しかし、所有したり使ったりっして記憶はありません。それは円を描くのはそれほど多くはありませんし、コンパスに烏口を付けて描いていました。
グラフォスは万年烏口という扱いで、基本的には烏口全盛の時代でした。

Posted by: 秋山東一 @ May 24, 2012 09:22 AM

 失礼します。
 細かなことですが、グラフォスをどのようにしてコンパスに取りつけていたのでしょうか。
円定規にはうまく合わないように思いますし、円作図の方法がとても気になります。
 のちの時代にはロットリング製図ペンが登場して、コンパスアタッチメントやインクエッジつきテンプレートで作図できましたが、同じ感覚でカラス口を使おうとすると、違いがあることに気づきます。
とくに小円作図はやはりコンパスだったのかと思ったりしています。ぜひ教えてください。

Posted by: 魚眼 @ May 23, 2012 11:51 PM