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土地の文明

BOOKS

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土地の文明  地形とデータで日本の都市の謎を解く

著者: 竹村 公太郎

ASIN: 45696431832
出版: PHP研究所
定価: 1,575-円(税込)

副題に「地形とデータで日本の都市の謎を解く」とあるが、まさしく、地形とデータから読み取れる世界があるのだ。

東京から始まって15章にわたって都市名が並んでいるが、一つ一つ独立した話としてある。

東京は三章にわたり「徳川幕府100年の復讐」とある。著者は天皇皇后の乗る車が半蔵門から出るのを見たことから、江戸城の正門はどこなのかを推理していく。そして、

半蔵門が江戸城の正門であると結論づける。その土手道として城内に至る半蔵門周辺の防備として、新宿通を周辺に面的に徳川御三家や親藩の上屋敷を配し、多くの旗本を住まわせて防備を固めていたことを古地図によって明らかにする。

そのような江戸城防衛拠点の麹町界隈に忠臣蔵の赤穂浪士の多くが潜伏したということ、討ち入りの直前の吉良邸が本所への移転という史実から、忠臣蔵は江戸幕府の陰謀でなかったと推理する。

そして第三章、吉良家抹殺の動機、徳川家と吉良家の確執の原因が愛知県、三河の矢作川の河口にあることを証明してみせるのだ。

「土地の文明」とは大きくでたものだが、各々の都市の話は、土地の有り様、その地形からの推測、統計データの微かな揺らぎからの推理は、なかなか見事な切り口で面白く読ませてくれるのである。


目次
第1章 東京—徳川幕府100年の復讐(1)
     ー検証・皇居の正門は半蔵門
第2章 東京—徳川幕府100年の復讐(2)
     ー赤穂浪士の討ち入りはなぜ成功したか
第3章 東京—徳川幕府100年の復讐(3)
     ー三河・矢作川の水争い
第4章 北海道—2000年遅れた「弥生時代」の到来
     ー自由の大地が日本を救う 
第5章 鎌倉—なぜ、頼朝は鎌倉に幕府を開いたか
     ー権力が権威と分かれた時
第6章 新潟—田植えは胸まで浸かるもの
     ー幻の映像を求めて
第7章 京都・滋賀—都市繁栄の絶対条件
     ー人々が行き交うために 
第8章 奈良—1000年の眠り
     ー証明・交流軸と都市の盛衰
第9章 大阪—「5・10日」渋滞の謎を解く
     ー商売の原点大阪
第10章 大阪—皮膚感覚の街
     ー都市の原点大阪 
第11章 神戸—都市の再開発が人々を救う
     ー阪神淡路大震災の忘れ得ぬ遺産
第12章 広島—最後の狩猟民族
     ー日本人のアイデンティティはこうして形成された 
第13章 福岡—漂流する人々の終の列島
     ー異常な巨大都市の誕生
第14章 特別編・遷都—首都移転が避けられない時
     ーやらざるを得なかった2つの遷都
第15章 特別編・ソウル—目撃、文明の変換
     ー清渓川の復元


本書の著者は東北大学工学部土木工学科修士課程修了し建設省入省、河川局長、その後退官し、現在、リバーフロント整備センター理事長なる職につく「天下り」の人である。

言葉の端々の行政自慢、IT嫌い、「脱ダム宣言」への敵意むきだしと、長年行政に携わってこられ、なかなかお役人風の抜けない方とみた。

Posted by 秋山東一 @ February 9, 2007 12:10 AM
Comments

内容的にはアースダイバーの皆さん必読........と思ったけれど、ちょっとね。
そんな役人臭を気にしなければ、なかなか読みやすく、面白く読めます。
胸まで浸かって田植えする新潟とか、交通の要衝、滋賀・京都とか、その筋の方々のお話をお聞きしたいものです。

Posted by: 秋山東一 @ February 9, 2007 09:45 AM

Amazonの読者評を読んでも、内容的には面白そうですが、筆者の支配欲も強そうな上からの物言いにムカツキそう。

Posted by: iGa @ February 9, 2007 09:14 AM