031027

レーニン・ダダ

BOOKS

LENINE_DADA_21.gif昔、持っていたんだけれど見当たらなくなってしまった。

そうだ、あんな面白い本、もう一度探してみようと Google してみた。
ネットの古本屋「ぱらぶら屋書店」にあった。すぐに購入した。

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レーニン・ダダ
ドミニク・ノゲーズ(著)鈴村和成(訳)
ダゲレオ出版
1990/05/25出版
定価:\1,800


レーニンとダダ、このまったく無関係に思える二つの歴史的存在を、全て真正な資料に基づいて一つの事実。歴史的真実を再構築する。全13章にわたり学位論文のように論述される。

第1章 衝撃的な啓示
1917年ロシア革命の前年、1916年亡命者レーニンと初期のダダイストがスイス・チューリッヒで数ヶ月間隣り合わせしていたという事実から出発する。ダダイズムが誕生したキャバレー・ヴォルテール、その至近にレーニンは住んでいたのだ。
たくさんの回顧録、証言から、レーニンはそこに住んでいたというだけでなく、彼はそこに参加したのではないかという結論を導き出す。

第2章 ウラジミール・ウリヤーノフのキャバレ通い
次は、レニンの性癖を分析することになる。公式にはレーニンはチューリッヒに移す住んだのはそこの図書館で…ということになっているが、レーニンはキャバレーでの大騒ぎが大好きな人間であることを、同じく回顧録、証言から導き出す。

第3章 チューリッヒ、1916年2月
そして、ダダ創立のその時、1916年6月の3日あるいは23日のキャバレ・ヴォルテール、「ダダの夕べ」にレーニンはそこにいたという事実の蓋然性を導き出す。

第4章 出会いと謎
第5章 ダダの発祥に関する新たな仮説
第6章 筆跡鑑定のよる驚くべき発見
第7章 ツアラ、ダリ、そしてレーニン

その後は、怒濤のような論述だ。
ダダ DADA という名称、歌、踊り、キャバレーの喧騒の中、レーニンのロシア語「ダー!、ダー!」からきた。ダダの詩人ツアラの「弧」という詩の草稿を厳密な筆跡鑑定したところ、レーニンの筆跡であった。サルヴァドーリ・ダリの「部分的幻覚、ピアノに出現したレーニンの六つの像」の分析から、それがキャバレー・ヴォルテールでのレーニンの存在の証明、それら全てを論理的な帰結として導き出す。

第8章  ロシアのダダイスト、レーニン
第9章  ダダの政治と矛盾律
第10章 反芸術としてのレーニン主義
第11章 「達成すべき、破壊的で、大きな仕事がある」
第12章 レーニン主義とパタフィジック
第13章 ロシア革命の真の意味

ロシア革命とはダダイスト・レーニンのダダ的な活動の産物であり、レーニン最後の、ダダイストとしての仕事は、あのスターリンを後継者としたことであると結論づける。


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一気に再読してしまった。この全てにわたって論理的な記述は、心地よさを通り越して、快楽さえ感じる。
この本の装丁もなかなかである。ピカピカの銀紙の表紙に赤字、開いた途端の真っ赤な見開きと、美しい本である。

Posted by @ October 27, 2003 12:00 AM
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