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[シェルター]

BOOKS , THINK

9月11日のワールドトレードセンターへのテロ以降、アフガニスタンへの空爆の映像を日々見せられる。
そこには日干しレンガによる低層な建物の風景、そこに投下させられるおどろおどろしいまでの性能を持った爆弾、そんな土で出来た建物は再び土に戻るが、大量の鉄と不発弾は時限装置となって人を傷つける機会を窺う。
建築設計者として、あの2本の超高層ビルと日干しレンガの小屋の落差に気がつかざるを得ない。あの立派な超高層ビルを破壊したという罪を罰するための爆撃が意味あるとは思えない。

二つの暴力的な映像はいやが上にも、建物が持つ「政治的象徴性」とでもいうような力を感ぜざるをえない。超高層ビル、ワールドトレードセンターの「政治的象徴性」それは資本制の象徴そのものである。こなた、日干しレンガの小屋には「政治的象徴性」そのものが欠如している、といえないだろうか。

2本の65m角の平面を持った420mの高さの巨大建築の目的は、「政治的象徴性」あるいは政治そのものと云えまいか。よいものあるいは正しいものはあまねく世界中に広めねばならない、今風に云えばグローバルイズムというのであろうか。そんな考え方、そんな思想、その象徴たるワールドトレードセンターが破壊されたのではないか。

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[シェルター]
ロイド・カーン著、玉井一匡/翻訳監修

ISBN: 4766333292
ワールドフォトプレス発行・グリーンアロー出版発売
価格: 3,800-円(税込)


もうお手元にあるやも知れないが、友人の建築家・玉井一匡氏が日本語版監修した SHELTER 「シェルター」がワールドフォトプレスより出版された。原書は30年あまり前の本だが、今、とってもタイムリーに登場したとしか思えない。
「シェルター」には、世界中のそれぞれの環境に適応したさまざまな家が登場している。それぞれの家の作り方があり、生活があり、その文化がある。
建築に携わる者として、あのワールドトレードセンターに象徴される世界だけが我々の世界なのではないことを、この「シェルター」は語っている。

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Posted by @ July 15, 2003 10:40 AM
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